2013年9月16日月曜日

掘立小屋句会・投句一覧

お待たせしました。

【掘】
あかあかと巨大掘削機へ秋日
いつしんに穴掘り起す今日の月
掘られたるさつまいもまだ土に濡れ
掘り下げることなくたひら秋の暮
掘り浅く刻まれていく居待月
掘り当ててみれば秋思のごときもの
掘るやうに深呼吸する秋の空
掘際の難所を抜けて秋祭
掘削の鉛直にして秋澄めり
掘削の傷の癒えたる秋桜
敬老の日に落とし穴掘り終へて
更生の半ばの藷を掘つてをり

【立】
黄葉ひとひら国立駅のロータリー
鶏頭の赤を視界に倒立す
秋の蝶立体交差くぐりゆく
秋灯の立喰蕎麦をめざしけり
青天に立たされてゐる曼珠沙華
蔦紅葉三点倒立稽古中
白桃の産毛のすべて立つてゐる
立ち直る速さ競ふて秋桜
立待のめいめいの手に氷菓かな
立直せむと点棒触るる夜寒かな
立膝のをんなの煙草白桔梗
立話から寝技まで案山子翁

【小】
バスタブに泡を満たせば小鳥来る
ハムスターの小さき寝息二日月
供へたる色とりどりの小菊かな
秋空の小市民的会話かな
秋深む小人とありて遊園地
秋風や小便小僧小便す
小さい秋とはどういう状態か述べよ
小悪魔のまなこに野分ありにけり
小商ひばかりしながら鳳仙花
小上りに運ばれてゆく秋の鯖
大小を取り混ぜておく鰯雲
墓地転じて小学校  転じて花野

【屋】
うどん屋のその後は知らずいわし雲
きりぎりす湯屋への道の色づきぬ
しもた屋の短き庇実南天
屋根裏に手記の置かるる良夜かな
屋根裏に窓はなくとも良夜かな
屋根裏に白蛇とゐる野分かな
屋根裏の裏雨月かも。郷田
屋上に月見団子や数百個
屋上の祠に小鳥来てゐたり
鶏小屋に葛の重みのかかりをり
秋の蚊を連れて酒屋の御用聞き
大部屋のがらんどうなる九月かな

【当季雑詠】
あさがほや神社は匂ひまで神社
おろおろと生きて愛してゑのこ草
コスモスの丘に鐘鳴る大志かな
ことごとく水を弾きて黒葡萄
暗がりに新酒を嗅いでをりにけり
古書店をまるごと買ひし残暑かな
視野せまき台風の目と見つめ合ふ
秋灯タロットカード並べをり
白線の前に棒立ち秋の暮
白猫を連れし死神来る九月
無花果の怒りは空にぶつけたり
面立ちの馬に似てゐる案山子かな
蓮の実の飛んで姉妹の和解せる
擂粉木で煮干をつぶす敬老日

(以上)

12句選(特選、逆選なし)
選句締切:9月20日(金)24時(JST)
投稿先:恒信風句会
http://koshinfu.blogspot.com/

題に関わらず全体から12句選にてお願い致します。
整理の都合上、句の順番はそのままにして下さい。
投句一覧へのコメントとして、投稿して下さい。その際、名前/URLというのを選択して、俳号もしくはご本名を入力して下さい。URLは入れなくてよいです。

ではよろしくお願い致します。

12 件のコメント:

  1. 〇掘り当ててみれば秋思のごときもの
    夢の中のようなデ・ジャヴです。

    〇白桃の産毛のすべて立つてゐる
    「すべて」といういいきりが素敵です。

    〇立ち直る速さ競ふて秋桜
    コスモスが、というより、見ている人についていっているような気がします。

    〇立話から寝技まで案山子翁
    個人的な趣味ですが「立ち話」だともっと好きです。

    〇バスタブに泡を満たせば小鳥来る
    自宅なのかお店なのか。

    〇小上りに運ばれてゆく秋の鯖
    こういうお店の鯖は旨いに決まっています。

    〇うどん屋のその後は知らずいわし雲
    「都合により閉店いたします」の都合に思いをはせるいわし雲です。

    〇屋根裏に窓はなくとも良夜かな
    屋根裏にスペースがある家が欲しいものだと思います。

    〇秋の蚊を連れて酒屋の御用聞き
    御用聞き本人はちっとも刺されないので腹が立つのです。

    〇ことごとく水を弾きて黒葡萄
    きらきらしている「黒」が色っぽくていいですね。

    〇暗がりに新酒を嗅いでをりにけり
    路地裏なのか、勝手口から中を覗き込んでいるのか。ちょっとだけ剣呑なものを感じます。

    〇蓮の実の飛んで姉妹の和解せる
    まあつまんないことでいいあっていたのですきっと。

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  2. トオイダイスケ2013年9月16日 16:52

    ○掘り当ててみれば秋思のごときもの
    ゆっくりとした思索。

    ○黄葉ひとひら国立駅のロータリー
    きれい。よく行く場所なので景を描きやすかった。

    ○秋の蝶立体交差くぐりゆく
    くぐりゆく、に実感がこもっている。

    ○バスタブに泡を満たせば小鳥来る
    大きな窓の浴室を想像した。気持ち良さそう。

    ○ハムスターの小さき寝息二日月
    よく見ている。繊細で静かな夜の気配。

    ○秋風や小便小僧小便す
    異常事態。

    ○きりぎりす湯屋への道の色づきぬ
    店に灯が点りだす微妙な暗さの時間帯。色づきぬ、がよい。

    ○しもた屋の短き庇実南天
    しもた屋という言葉を初めて知りました。寂しいけど風情がありますね。

    ○屋根裏に窓はなくとも良夜かな
    どこにいても月の夜のやわらかさ。

    ○鶏小屋に葛の重みのかかりをり
    鶏小屋の金網は気がつくと軋んでいますね。

    ○コスモスの丘に鐘鳴る大志かな
    尾崎紀世彦を何故か思い出した。

    ○ことごとく水を弾きて黒葡萄
    実のぷりぷりの極致。

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  3. ○掘り当ててみれば秋思のごときもの
    ああ、えらいものを掘り当ててしもた・・これは確かあの時の・・。

    ○敬老の日に落とし穴掘り終へて
    この穴は、あなたが落ちるための穴なんです。

    ○青天に立たされてゐる曼珠沙華
    「そこのあなた、名前は?」「はい、山田曼珠沙華です」「立ってなさい!」。

    ○立膝のをんなの煙草白桔梗
    「おかみさん、今何とか言いなすったね」。

    ○小さい秋とはどういう状態か述べよ
    今年は栗も柿も実りが悪くて。おまけに松茸までも小振りで。

    ○小上りに運ばれてゆく秋の鯖
    若狭の国か。へしこも召し上がれ。

    ○うどん屋のその後は知らずいわし雲
    時代劇の密偵、三田明扮する屋台の親父か。

    ○屋根裏に手記の置かるる良夜かな
    あっ、こんなところに・・そうだっんですか、そうとは知らず・・。

    ○鶏小屋に葛の重みのかかりをり
    眩しくなくて、鶏もけっこう、けっこう。

    ○ことごとく水を弾きて黒葡萄
    巨峰なら、さもありなん。

    ○古書店をまるごと買ひし残暑かな
    今更ながら、流行らない店を買うてしまいました(汗)。

    ○擂粉木で煮干をつぶす敬老日
    まだまだ、長生きをしなければ。

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  4. ○敬老の日に落とし穴掘り終へて
    掘ったのは老人である。老人でなければならない。

    ○秋灯の立喰蕎麦をめざしけり
    チープであればあるほど秋灯は美しい。

    ○ハムスターの小さき寝息二日月
    小動物の寝息は実によきもの。二日月いいですね。

    ○供へたる色とりどりの小菊かな
    この当たり前さ加減、花の選び方、詠いぶり、かなの止めまで、凡庸のただならなさ。

    ○秋空の小市民的会話かな
    微笑ましいととるか、皮肉ととるか。どちらにしても、秋空は青く爽やか。

    ○小さい秋とはどういう状態か述べよ
    気持ちわかります。

    ○小上りに運ばれてゆく秋の鯖
    椅子席なんかでちら見すると、旨そうなんだよね、これが。

    ○屋上に月見団子や数百個
    「月見の会」とか言っちゃってね。唐突かつ説明的な数百個に諧謔が滲みます。

    ○鶏小屋に葛の重みのかかりをり
    鶏小屋の質量が実によいです。

    ○大部屋のがらんどうなる九月かな
    昔の撮影所のがらんとした化粧臭のする部屋。できれば日焼けした毛羽立つ畳で。

    ○ことごとく水を弾きて黒葡萄
    実に見事で甘そうな葡萄です。

    ○秋灯タロットカード並べをり
    灯りの下の細くて長いマニキュアに染まる爪の指が浮かびます。

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  5. ★掘り当ててみれば秋思のごときもの
     うむ。春愁とも違うセンチメンタリズム。

    ★黄葉ひとひら国立駅のロータリー
     一橋大学からひらひらと。

    ★鶏頭の赤を視界に倒立す
     秋らしさあり。鶏頭もこう詠われると冥利だろう。

    ★秋灯の立喰蕎麦をめざしけり
     私もときどき目指します。

    ★立膝のをんなの煙草白桔梗
     ハードボイルド的婦人。モデルは沢たまきだろうか。

    ★バスタブに泡を満たせば小鳥来る
     お魚になった私…高沢順子を思い出させる一句。

    ★秋深む小人とありて遊園地
     この遊園地にただよう場末感のよろしさ。

    ★うどん屋のその後は知らずいわし雲
     上五を替えても成立してしまうフレーズだけれど、何となくうどん屋はよさそうな気がする。

    ★秋の蚊を連れて酒屋の御用聞き
     連れてきて欲しくないナァ。
     
    ★あさがほや神社は匂ひまで神社
     神社の匂い。遠い記憶だけれど、確かにあった。

    ★暗がりに新酒を嗅いでをりにけり
     「嗅いで」という措辞だと、なぜかフェチ的所作に見えてくる不思議。

    ★秋灯タロットカード並べをり
     大概いい結果にはならない。

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  6. 〇いつしんに穴掘り起す今日の月
    今日の月が意外だった。

    〇掘られたるさつまいもまだ土に濡れ
    まあ、そうなんですが。

    〇敬老の日に落とし穴掘り終へて
    老人を落とすのか。それとも老人が落とすのか。

    〇秋の蝶立体交差くぐりゆく
    華麗にくぐり抜けて行く。

    〇立話から寝技まで案山子翁
    えらい案山子はんですな。

    〇バスタブに泡を満たせば小鳥来る
    詩的でちょっぴりエロチック。

    〇ハムスターの小さき寝息二日月
    ハムスターが動きそうで動かない。

    〇小さい秋とはどういう状態か述べよ
    いるんですよね、そういうカタイこと言う人が。

    〇小悪魔のまなこに野分ありにけり
    そういう小悪魔が好きなんだからしかたない。

    〇古書店をまるごと買ひし残暑かな
    うそだぁ。

    〇視野せまき台風の目と見つめ合ふ
    視野が狭いのはお互いさま。

    〇蓮の実の飛んで姉妹の和解せる
    老姉妹か。

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  7. ○掘るやうに深呼吸する秋の空
     これは息が浅くなりがちな人でないと分からないかも知れないけど、ほんとに肺を掘るように息を吸うのですよ。秋の空、いいですね。そのように吸った空気の痛いような美味しさが伝わってきます。

    ○更生の半ばの藷を掘つてをり
     『あしたのジョー』ですか。

    ○鶏頭の赤を視界に倒立す
     いいですね、倒立の視界の鶏頭の赤。

    ○立話から寝技まで案山子翁
     「案山子翁」という言い方、知らなかったけど、検索すると何句も出てくるからあるのでしょう。なんというか、村じゅうの冨と悪が集中する長老のようで、案山子翁の前で切れていないと読んだ方がいいですね、この場合。

    ○ハムスターの小さき寝息二日月
     いいですね、いかにもハムスターです。

    ○秋風や小便小僧小便す
     いいですね、小便小僧小便す。こうたたみかけるなら、上五は「しゅうふうや」と読みたいですね。

    ○小悪魔のまなこに野分ありにけり
     でも好きなんでしょ。

    ○小上りに運ばれてゆく秋の鯖
     そういえば、小上りなんてもののある店には随分行っていないなあ。

    ○大小を取り混ぜておく鰯雲
     造物主俳句ですね。いえ、もちろん鰯雲の前で切れてもいいんですけど。

    ○大部屋のがらんどうなる九月かな
     夏のあいだ学生の合宿とかで使われていた大部屋なのでしょうか。九月というとそんな気がします。

    ○あさがほや神社は匂ひまで神社
     あさがほが匂ひに関与していないところがいいですね。

    ○古書店をまるごと買ひし残暑かな
     ブルジョワですね。

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  8. ○黄葉ひとひら国立駅のロータリー
    国立駅がよくみえてきます。

    ○鶏頭の赤を視界に倒立す
    血がすぐに頭にのぼりそう。

    ○秋の蝶立体交差くぐりゆく
    ちょっと不思議な気分。

    ○ハムスターの小さき寝息二日月
    小さき寝息がいい。二日月とあっている。

    ○供へたる色とりどりの小菊かな
    色とりどりがこの場合小菊の質感を伝えてくれています。

    ○小商ひばかりしながら鳳仙花
    鳳仙花でさらに切ない。

    ○墓地転じて小学校 転じて花野
    一字アキが効いていますね。時間と空間を飛び越えたようで、
    花野が少し異界めいて感じられます。

    ○うどん屋のその後は知らずいわし雲
    おいしいうどん屋だったのだろうか。

    ○鶏小屋に葛の重みのかかりをり
    鳴き声にも影があるよう。

    ○秋の蚊を連れて酒屋の御用聞き
    ノスタルジックな生活感。

    ○あさがほや神社は匂ひまで神社
    神社の独特の匂いがよく伝わってくる。
    さらにあの独特の暗さ、静けさまで体感できる。

    ○暗がりに新酒を嗅いでをりにけり
    少し木の樽の匂も混じって、おいしそう。

    返信削除
  9. ○掘るやうに深呼吸する秋の空
    「掘るやうに」深呼吸したい。

    ○掘削の鉛直にして秋澄めり
    恥かしながら「鉛直」を初めて知りました。

    ○敬老の日に落とし穴掘り終へて
    ブラックな。

    ○秋の蝶立体交差くぐりゆく
    蝶と遭うのはこの季節が一番多いような気がします。

    ○立待のめいめいの手に氷菓かな
    開場を待ちながら。

    ○立話から寝技まで案山子翁
    「寝技まで」に参りました。

    ○ハムスターの小さき寝息二日月
    ひくひく舟を漕いで。

    ○小さい秋とはどういう状態か述べよ
    何処かの国語入試問題にありそう。

    ○小上りに運ばれてゆく秋の鯖
    割烹着の女将さんがやっているようなお店。

    ○鶏小屋に葛の重みのかかりをり
    秋湿りの雰囲気。

    ○暗がりに新酒を嗅いでをりにけり
    蔵の暗がりで、においだけで酔いそうな。

    ○視野せまき台風の目と見つめ合ふ
    今回の台風18号の視野は広かったのか。

    返信削除
  10. ○掘られたるさつまいもまだ土に濡れ
    質感がいいですね。

    ○掘り当ててみれば秋思のごときもの
    少し掘れば誰でも。

    ○敬老の日に落とし穴掘り終へて
    いじわるばあさんを思い出しました。

    ○青天に立たされてゐる曼珠沙華
    そういえばバツの悪そうな。

    ○大小を取り混ぜておく鰯雲
    おおらかな視点がいいですね。

    ○屋根裏に手記の置かるる良夜かな
    屋根裏ってすこし憧れます。

    ○屋上の祠に小鳥来てゐたり
    小鳥が来るのに相応しいところ。

    ○秋の蚊を連れて酒屋の御用聞き
    勝手口ってなくなりましたね。昭和っぽいです。

    ○あさがほや神社は匂ひまで神社
    あさがおかなぁ、と思いながら、この言い切りに一票。

    ○暗がりに新酒を嗅いでをりにけり
    酒蔵でしょうか、いいですねぇ。

    ○古書店をまるごと買ひし残暑かな
    古書店というところが物好きですね。

    ○面立ちの馬に似てゐる案山子かな
    憎めません。

    返信削除
  11. ○掘られたるさつまいもまだ土に濡れ
    ごろんと大きなお芋です。

    ○掘り当ててみれば秋思のごときもの
    まさしくのようなもの。

    ○掘るやうに深呼吸する秋の空
    相当深い腹式呼吸ですね。

    ○秋の蝶立体交差くぐりゆく
    結構な高さを飛びます。

    ○青天に立たされてゐる曼珠沙華
    立たされてゐる、ですね。

    ○ハムスターの小さき寝息二日月
    かそけきものと月の取り合わせ。

    ○大小を取り混ぜておく鰯雲
    お気遣いありがとうございます。w

    ○うどん屋のその後は知らずいわし雲
    誰も何も言わずに時が流れて。。。

    ○屋根裏に手記の置かるる良夜かな
    お気に入りの隠れ家。

    ○鶏小屋に葛の重みのかかりをり
    葛の重みの表現にはっとしました。

    ○秋の蚊を連れて酒屋の御用聞き
    連れてに俳諧味が。

    ○暗がりに新酒を嗅いでをりにけり
    嗅覚が鋭くなるんですね。w

    返信削除
  12. ○いつしんに穴掘り起す今日の月
    悪巧みの予感がします。

    ○掘り当ててみれば秋思のごときもの
    郷愁、または後悔。

    ○更生の半ばの藷を掘つてをり
    まだ早い!

    ○立膝のをんなの煙草白桔梗
    あねさん!

    ○小さい秋とはどういう状態か述べよ
    京都大学入試問題より抜粋、とか。

    ○小上りに運ばれてゆく秋の鯖
    鰯ではなく鯖なんですね。

    ○墓地転じて小学校 転じて花野
    時の移ろいが悲しい。

    ○屋根裏に白蛇とゐる野分かな
    縁起がいいような悪いような。

    ○秋の蚊を連れて酒屋の御用聞き
    どちらも必死です。

    ○暗がりに新酒を嗅いでをりにけり
    暗くとも酒の匂いはわかります。

    ○古書店をまるごと買ひし残暑かな
    「おやじぃ、この店のもの全部くれやぁ。」

    ○無花果の怒りは空にぶつけたり
    その怒り、最後は自分に戻ってきますよ。

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