2012年5月31日木曜日

寝心地体感句会・投句一覧

たいへんお待たせしました。8人だとそうとう淋しいですね。

【寝】
うたた寝に落ちるそのとき手にバナナ
サングラス寝台車から降りてきし
腰重き寝だめ卯の花腐しかな
寝てゐればいいのと笑ふ紅薔薇
辻褄を合はせてゐたる昼寝覚
箱庭の灯篭ひとつ寝てゐたり
百合の香や追ひつめられて寝台車
鳴く鳥は今日も変わらぬ朝寝かな

【心】
一心に滝を見つめて滝落つる
銀色の筋ででむしの好奇心
心より見た目がだいじ扇風機
心音と水母のうごき重なりぬ
心臓も肝臓も喰ふ薄暑かな
水蚤の死因もとより心不全
中心に線あるをとこ走り梅雨
貧しくも心ゆたかに田植かな

【地】
とりどりの雨季訪れる地球かな
ヘリコプター着地夏野をふくらませ
意地はつて地球に生きて金環食
黒レース手袋露地に拾はれず
地球とて破滅に向かふ羽抜鳥
白地図をミウラ折して夏山へ
雷に驚いてゐる地方都市
曖昧になりゆく地べたハンモック

【体】
この体空へと浮かぶ蛍狩
ぼうふらの止めやうもなき身体かな
夏めくや存外尖る四面体
体験乏しきががんぼの自負自足
体裁を構つてをれぬ夕立かな
長体の活字の揺らすハンモック
比例して体積増えるみどりの夜
繭の香をまとひ体操着のふたり

【感】
ががんぼのががんぼといふ浮遊感
ぼうたんの持ち重りせる多幸感
感想を聞かれ正座すきゅうり揉み
感度やや悪しきラジオや海の家
香水の感じるままに恋をして
置きざりの水羊羹のあの感じ
直感で選ぶ金魚の面構へ
鈍感に覆はれてゐる五月闇

【当季雑詠】
アマリリス咲かせ安心設計の家
金環日蝕過ぎりて今朝の青葉冷
黒き布掛かる写真機夏の山
渋滞の湘南ナンバー南風
洗濯機回しながらに髪洗ふ
大みみず新体操して消えにけり
中庭の緑雨見てゐる美術館
帆のやうに提灯連ね夕薄暑
無理やりのお願いひとつアマリリス
夜の噴水すとんと星をきらめかす
優曇華や水星よりの盗聴器
蝙蝠を連れブラジャーを売りにゆく

(以上)

8句選(特選、逆選なし)
選句締切:6月8日(金)24時(JST)
投稿先:恒信風句会
http://koshinfu.blogspot.com/

題に関わらず全体から8句選にてお願い致します。
整理の都合上、句の順番はそのままにして下さい。
投句一覧へのコメントとして、投稿して下さい。その際、名前/URLというのを選択して、俳号もしくはご本名を入力して下さい。URLは入れなくてよいです。
なお、右側の「最近のコメント」という欄は反映するのに時間がかかるようです。

ではよろしくお願い致します。

追記 【感】の5句目、欠落の申し出があったので修正しました。

7 件のコメント:

  1. ★ヘリコプター着地夏野をふくらませ
    まだプロペラが回っているのです。

    ★体裁を構つてをれぬ夕立かな
    尻っぱしょりして走り出すご婦人。

    ★ががんぼのががんぼといふ浮遊感
    ががんぼの浮遊感はががんぼそのものだったのねん。

    ★置きざりの水羊羹のあの感じ
    そうそう、あの感じ。

    ★直感で選ぶ金魚の面構へ
    選ばれた金魚は幸せなのだろうか。

    ★アマリリス咲かせ安心設計の家
    設計よりも本当は施工が大事なのです。アマリリス、虚実合い半ば。

    ★夜の噴水すとんと星をきらめかす
    このオノマトペは効果的。

    ★蝙蝠を連れブラジャーを売りにゆく
    ブラジャー売りっているのかしらん。でもなんか楽しい。

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  2. ○箱庭の灯篭ひとつ寝てゐたり
     「倒れをり」ではなく「寝てゐたり」というあたりが、最初作った時には丹精込めて作ったはずなのにいつしか放置されてしまう箱庭のどうでもよさを感じさせます。

    ○心より見た目がだいじ扇風機
     「だいじ」という平仮名表記や「扇風機」という季語の斡旋のなんとも言えぬなめきった感じが絶妙な効果を上げています。

    ○心音と水母のうごき重なりぬ
     はい、そんな感じです。

    ○心臓も肝臓も喰ふ薄暑かな
     鰻とか鳥とかでしょうか。身も蓋もない感じが実によいです。

    ○水蚤の死因もとより心不全
     かの生物に心臓があるのかじつは知らないのですが、なんとも言えず可笑しいです。
    老衰で死ぬこともないと思うし…。

    ○ヘリコプター着地夏野をふくらませ
     文芸上の真というか、じつにさわやかな感じがします。

    ○繭の香をまとひ体操着のふたり
     なんだか淫靡な引きこもり感があってよいです。

    ○黒き布掛かる写真機夏の山
     なんともレトロでよいです。「夏の山」というのも、特定の行事を想起させなくていい塩梅です。

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  3. ○心臓も肝臓も喰ふ薄暑かな
    こういう風に言われると生々しいですね。

    ○中心に線あるをとこ走り梅雨
    線ってなんだろう。不思議な感じがしました。

    ○とりどりの雨季訪れる地球かな
    大きく捉えたところが魅力でした。

    ○白地図をミウラ折して夏山へ
    ミウラ折って初めて知りました。なぜ白地図なんだろうと思いながら・・。

    ○曖昧になりゆく地べたハンモック
    ハンモックの上にいるとこういう感じかもしれません。

    ○繭の香をまとひ体操着のふたり
    青っぽい感じでしょうか。

    ○無理やりのお願いひとつアマリリス
    アマリリスっぽさがでていると思います。

    ○蝙蝠を連れブラジャーを売りにゆく
    荒唐無稽まではいかないほどよいリアリティのなさ。

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  4. うたた寝に落ちるそのとき手にバナナ
     猿にしても心地よい日。

    辻褄を合はせてゐたる昼寝覚
     続きの夢を見たくてもそう簡単には行かず・・・

    箱庭の灯篭ひとつ寝てゐたり
     ひとつ寝てゐたりの感覚が良いですね。

    心より見た目がだいじ扇風機
     そうそう、そこにあることが大事。

    置きざりの水羊羹のあの感じ
     あの感じが分かりませんが・・・

    アマリリス咲かせ安心設計の家
     どこの家も安心設計がうたい文句、だがアマリリスには
    気付かなかった。

    金環日蝕過ぎりて今朝の青葉冷
     確かに冷えましたね。

    黒き布掛かる写真機夏の山
     いやぁ、人昔の団体観光を思い出しました。

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  5. ○腰重き寝だめ卯の花腐しかな
    寝だめはかえって疲れます。頭もどんより。

    ○心音と水母のうごき重なりぬ
    傘が閉じたり開いたりの感じが。

    ○中心に線あるをとこ走り梅雨
    いわゆる「ブレない」男ってことでしょうか。

    ○ヘリコプター着地夏野をふくらませ
    夏草をぶわっと巻き上げて。

    ○繭の香をまとひ体操着のふたり
    「繭の香」が意味ありげです。ヒエロニムス・ボスの絵だとか『追悼のざわめき』の小人症の兄妹だとかを連想させます。

    ○ががんぼのががんぼといふ浮遊感
    全くその通りです。

    ○アマリリス咲かせ安心設計の家
    あかるくどっしりのアマリリスがぴったり。

    ○無理やりのお願いひとつアマリリス
    アマリリスなら四つのお願いでも聞いてくれそう。

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  6. ○腰重き寝だめ卯の花腐しかな
    実際たくさん寝た後の腰は重いです。「卯の花腐し」がよく付いていると見るか、つきすぎと見るかは難しいところ。

    ○心音と水母のうごき重なりぬ
    みずからが水の中に入っている設定で水母を詠むのは、かなりユニークなのでは?

    ○心臓も肝臓も喰ふ薄暑かな
    ハツとレバ。なるほどです。「も」は一考か。

    ○ヘリコプター着地夏野をふくらませ
    ヘリコプターで起こる風と草の動きを、こう詠む、という手腕。

    ○ぼうふらの止めやうもなき身体かな
    じっとしていることがない。中七、コクがあります。

    ○感度やや悪しきラジオや海の家
    海辺は電波の具合は? といったこととは別に、海の家に置いてあるようなラジオはきっと感度が悪い。なつかしい心持ちにもしてくれる、うれしい句。

    ○大みみず新体操して消えにけり
    事情の「わけわからなさ」が魅力。

    ○夜の噴水すとんと星をきらめかす
    水と星。素敵ですね。「きらめかす」と他動詞にしたところ、好悪が分かれそうです。

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  7. ○白地図をミウラ折して夏山へ
    ミウラ折に興味深々。

    ○箱庭の灯篭ひとつ寝てゐたり
    さもありなん、下五の描写が巧いです。

    ○百合の香や追ひつめられて寝台車
    逃避行か、それとも・・。

    ○心音と水母のうごき重なりぬ
    水母と同調するんですね。

    ○中心に線あるをとこ走り梅雨
    なかなか芯のあるをとこと推察。

    ○繭の香をまとひ体操着のふたり
    繭の香、なんともあまやか。

    ○感度やや悪しきラジオや海の家
    ざわざわっとした感じ。

    ○置きざりの水羊羹のあの感じ
    あの感じでよくわかります。w

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