2012年11月4日日曜日

無賃乗車句会・投句一覧

【無】
音無川さくらもみぢも散りをはる
古酒新酒無理な姿勢で寝てしまふ
集合は無人駅なり山粧ふ
所在無きひとりのひと日熟柿吸ふ
着ぶくれのどこかになくす切符かな
無蓋車の藁ひきづりて秋の風
無月なり筋肉痛の足を揉み
無駄なことばかりしてゐる小春かな
有耶無耶を串刺しにしておでん酒


【賃】
お駄賃とともに焼藷屋へ走る
お駄賃の替はりに貰ふ蜜柑かな
お駄賃の縫ひぐるみ増え冬に入る
どんぐりの五つが家賃大きな尾
ポストまでどんぐりひとつお駄賃に
最新式運賃箱に秋日満ち
木賃宿の入口に立つ朴落葉
芒原賃走ランプ赤黒し

【乗】
うそ寒の乗降口の蛇腹かな
一番に名乗り上げたる実南天
月へゆく加減乗除の果ての道
乗車券冬の日向に差し出せり
乗船に並ぶひとびと着ぶくれて
地下鉄を乗り継ぎて木枯に出る
暮の秋乗れば奈落のエレベータ
恋ゆゑに二は二乗とす酉の市

【車】
コスモスやほぼ一定の車間距離
もみぢ葉の化して海盤車となりにけり
黄落や滑車の見えるエレベーター
黄落をつつきつてゆく乳母車
口車躱し黄落しきりなり
車道へとはみ出してゆく萩の乱
秋夕焼ひらきすぎたる車間距離
戦車とか愚者とか銀の大花野

【当季雑詠】
くまさんのやうな恋人小六月
らしからぬ今日の我々十三夜
果樹園にころろころろと林檎鳴る
鶏頭の全部がこちら向いてゐる
秋去りぬ魑魅魍魎を引き連れて
素つ気なき空の青さや鵙猛る
敗荷といふミッションを遂行す
晩秋の蟻の穴より空の音
末つ子のやうに灯火を親しめり

(以上)

8句選(特選、逆選なし)
選句締切:11月7日(水)24時(JST)
投稿先:恒信風句会
http://koshinfu.blogspot.com/

題に関わらず全体から8句選にてお願い致します。
整理の都合上、句の順番はそのままにして下さい。
投句一覧へのコメントとして、投稿して下さい。その際、名前/URLというのを選択して、俳号もしくはご本名を入力して下さい。URLは入れなくてよいです。
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ではよろしくお願い致します。

8 件のコメント:

  1. ★集合は無人駅なり山粧ふ
    こういう吟行してみたい。

    ★無駄なことばかりしてゐる小春かな
    人生無駄なことが大半。でもそれが豊かさだと感じたりするから面白い。

    ★お駄賃の替はりに貰ふ蜜柑かな
    こういう牧歌的風景、好き。

    ★最新式運賃箱に秋日満ち
    運賃箱、やられた感。

    ★乗車券冬の日向に差し出せり
    冬日越しに老齢の車掌さん。昭和の薫り。

    ★くまさんのやうな恋人小六月
    もこもこのセーター姿なのねん。

    ★鶏頭の全部がこちら向いてゐる
    鶏頭花ならではの感慨。

    ★敗荷といふミッションを遂行す
    粛々と。

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  2. ○古酒新酒無理な姿勢で寝てしまふ
    おおいに呑み、起きたあとがいやはやでしょうね。

    ○集合は無人駅なり山粧ふ
    紅葉の山へと、いいスタートです。

    ○無駄なことばかりしてゐる小春かな
    いいじゃないの、と言いたくなるのは小春だから。

    ○一番に名乗り上げたる実南天
    赤い実の季節の到来を告げてくれているのですね。

    ○乗車券冬の日向に差し出せり
    受け取ってくれるという、触れ合いが少なくなっていますね。外なら、遊園地とかならまだありますね。

    ○秋夕焼ひらきすぎたる車間距離
    先行の車がどんどん先へ行ったんでしょうか。夕焼の赤さが感じられます。

    ○くまさんのやうな恋人小六月
    可愛い恋です。小六月の固さがいい塩梅。

    ○素つ気なき空の青さや鵙猛る
    ピンポイントの鵙猛る寂寥感が。

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  3.  なんだか今回は「お駄賃」対決、「車間距離」対決、「エレベーター」対決の様相を呈していますね。

    ○着ぶくれのどこかになくす切符かな
     ずるい。ひらがなにしている。

    ○どんぐりの五つが家賃大きな尾
     家賃というからには住み着いているのでしょうが、定期的にどんぐり五つを納めるのだとしたらつながれているわけでもなく、犬だとも狐だとも書かれていない「大きな尾」はかなり不思議な存在です。

    ○月へゆく加減乗除の果ての道
     理屈といえば理屈ですが、目に見えない軌道が確かにそれじゃないといけない道であるあたりを過不足なく言い当てていると感じます。

    ○恋ゆゑに二は二乗とす酉の市
     恋のエネルギーと酉の市の活気がミックスされて、なんとも言い難い理不尽な句に仕上がっていると思います。

    ○コスモスやほぼ一定の車間距離
     この、まったく何ごともない行楽感がよいです。

    ○黄落をつつきつてゆく乳母車
     臭気満つ銀杏並木は、長くいるとそれだけで病気になりそうですからね。

    ○車道へとはみ出してゆく萩の乱
     はは、萩の乱って不平士族ですか。

    ○戦車とか愚者とか銀の大花野
     「戦車とか愚者とか」の音がいいですね。「銀の大花野」はうっと思いましたが、一瞬の閃光とともに花野が見えるのです。

    ●鶏頭の全部がこちら向いてゐる
     「こちら向いてゐる」の助詞の省略がなんとも苦しく、仮に「鶏頭が全部こちらを向いてゐる」と置いて比較してみるのだけど、「鶏頭の全部が」という原句の「の」の効果をうまく説明できる方、いらっしゃいますか。

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  4. ○お駄賃とともに焼藷屋へ走る
    お釣りがお駄賃なのでしょう。昭和三十年代風。

    ○どんぐりの五つが家賃大きな尾
    きつねですね、これは。絵本の世界。

    ○木賃宿の入口に立つ朴落葉
    さすらい人か。つげ義春の世界。

    ○乗車券冬の日向に差し出せり
    この何気なさがたまりません。

    ○コスモスやほぼ一定の車間距離
    コスモス街道一直線。

    ○戦車とか愚者とか銀の大花野
    ブリューゲルの寓話世界。

    ○敗荷といふミッションを遂行す
    自然の営為はなべてミッションかもしれません。

    ○末つ子のやうに灯火を親しめり
    微妙な唐突感。

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  5. ○古酒新酒無理な姿勢で寝てしまふ
     明日は寝違えてますね。もう忘年会シーズンだ。

    ○集合は無人駅なり山粧ふ
     なんとなく、鉄道好きの集まりの気がする。

    ○着ぶくれのどこかになくす切符かな
     なくしますね。ポケットの奥深くに手が入らなかったりして。

    ○お駄賃の替はりに貰ふ蜜柑かな
     届けに行ってまたもらう。

    ○最新式運賃箱に秋日満ち
     バスに斜めの日が入ってくる季節になりました。

    ○うそ寒の乗降口の蛇腹かな
     蛇腹の入り口はテンション上がります。吸い込まれる。

    ○乗車券冬の日向に差し出せり  
     これも、車内に日が入っている感じですね。

    ○乗船に並ぶひとびと着ぶくれて
     それぞれに防寒をこらすでこぼこのシルエット。

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  6. ○古酒新酒無理な姿勢で寝てしまふ
    起きたときにあちこち痛くてびっくり。

    ○着ぶくれのどこかになくす切符かな
    ありますね~。

    ○無駄なことばかりしてゐる小春かな
    わかっちゃいるんですよ。

    ○お駄賃とともに焼藷屋へ走る
    元気に走ってゆく姿がみえる。

    ○乗車券冬の日向に差し出せり
    なんでもない感がとっても良いです。

    ○コスモスやほぼ一定の車間距離
    微妙な間隔を保っている感。

    ○黄落や滑車の見えるエレベーター
    あるある感。色彩も良いです。

    ○末つ子のやうに灯火を親しめり
    末っ子が羨ましい。w

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  7. ○古酒新酒無理な姿勢で寝てしまふ
    お酒はほどほどに・・。

    ○着ぶくれのどこかになくす切符かな
    あせるほどに見つからないのです。

    ○ポストまでどんぐりひとつお駄賃に
    お駄賃もいろいろありましたが、自分で自分にお駄賃をあげている感じが○。

    ○乗車券冬の日向に差し出せり
    良い旅になりそうです。

    ○秋夕焼ひらきすぎたる車間距離
    広々とした感じが良いです。

    ○くまさんのやうな恋人小六月
    微笑ましいですね。小六月が渋い。

    ○敗荷といふミッションを遂行す
    ミッションとはいえ切ないものです。

    ○末つ子のやうに灯火を親しめり
    意外性がありました。具体的にどういうことかわからないのですが、雰囲気があります。

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  8. 〇集合は無人駅なり山粧ふ
    有人駅になるわけで。

    〇無駄なことばかりしてゐる小春かな
    無駄ってなんだろう。

    〇最新式運賃箱に秋日満ち
    坐五がいいです。

    〇芒原賃走ランプ赤黒し
    ミステリーっぽい。

    〇乗車券冬の日向に差し出せり
    受け取る人の顔は逆光でよく見えない。

    〇口車躱し黄落しきりなり
    かわしという漢字に重心が。平仮名でないのがこだわり。

    〇戦車とか愚者とか銀の大花野
    「銀」の力をいただきます。

    〇敗荷といふミッションを遂行す
    この季語でこう詠むとは。

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