2013年7月30日火曜日

三者凡退句会・投句一覧

 たいへんお待たせしました。

【三】
羽蟻摘む三つ目なれば逃がしたり
夏の夜の三面鏡に我われ吾
夏雲や三人ゐれば二人つく
夏夕べ三段登るチャペルあり
掬はれし金魚三匹死はまちまち
午前三時放送休止夜の秋
三界の炎に灼かれ御徒町
三振のあと膨大な草いきれ
三人で来て順番に裸になる
三人の真中に置かれ西瓜かな
熱狂の三軒茶屋を出て涼し
弁当ののちの車中の三尺寝
夜濯の夫よ三番から歌ふ
夕焼にほどよきサイズ三ノ宮
裸の子三人くらゐみつくろひ

【者】
お見合いパーティ司会者の汗まみれ
悪者に憧れてゐる夏休み
易者には解らぬ道や南風吹く
影武者の集まつてゐる独活の花
夏風邪の患者がひとり宙に舞ふ
歌舞伎者のごとくに潰すトマトかな
兄者と呼ばれ飲む酒辛し船遊
行水の水を惜しむも小者かな
水槽に静かな患者たちの夏  
南風忍者屋敷の破損箇所
日焼して忍者見えなくなりにけり
編集者登山小屋から催促す
満月に忍者が軽くうなづいた
論者みな広間に集ふ西瓜かな
萍や者共じっと控えおり

【凡】
九回の凡打で終る夏の果
神輿行く凡そ半分担がずに
世志凡太東京ぼん太夏さみし
早野凡平の帽子や夏料理
非凡なる泳ぎを教へたのは誰
平凡な夫婦の夜の蚊遣り香
凡人としてナイターを観戦す
凡人へ踏切ひらく立葵
凡庸な面子の揃ふ夏祭り
凡庸に風を漕ぎをりハンモック
凡例にある色全て使ふ虹
凡例に書かれてをらぬ夏の果
凡例のごとくに冷し中華かな
凡例は詠読まれぬものよ雨安居
凡例を読んだことなき木槿かな

【退】
蚊柱と痴漢撃退グッズかな
鬼退治されたる鬼が島の夏
後退るやうに進みし蟇蛙
衰退の街昼顔にふちどられ
船虫は退却したり笑むごとく
早退の者ら集へる泉かな
退き際に日も風もあり尺蠖の
退けば広くなる海青岬
退学の少年の指かきごほり
退屈な短編小説まくはうり
退場の赤あざやかなかき氷
中退の人とたのしむ冷素麺
入退室管理システム指の汗
白靴に履き替え今朝は退院す
油虫退路断たれて撃沈す

【当季雑詠】
夏帽子くりかへしくりかへしはめなほし
干し草のなかに隠れてねむる莫迦
客船と五色のテープ雲の峰
蛇の衣わつとつまむは女子ばかり
常駐の管理人室メロンの香
生命線二つ開きし暑さかな
西瓜はなぜ永世中立国なのか
大夕焼死ぬまで踊るボレロかな
日替はりのロケット鉛筆月涼し
彼の人に彼氏がゐるといふ大暑
閉店の告知貼りつつ生ビール
片蔭にある牢獄のやうな窓
母親の見てゐる前で雲の峰
明後日になればわかるよバナナの斑
恋人でなかつた頃の冷し酒
籐椅子に謝る時を待つてゐる
驟雨みな大慌てなる大通り

(以上)

15句選(特選、逆選なし)
選句締切:8月2日(金)24時(JST)
投稿先:恒信風句会
http://koshinfu.blogspot.com/

題に関わらず全体から15句選にてお願い致します。
整理の都合上、句の順番はそのままにして下さい。
投句一覧へのコメントとして、投稿して下さい。その際、名前/URLというのを選択して、俳号もしくはご本名を入力して下さい。URLは入れなくてよいです。
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ではよろしくお願い致します。

15 件のコメント:

  1. トオイダイスケ2013年7月31日 1:07

    ○夏夕べ三段登るチャペルあり
    たった三段だけど「登る」感じが強い。

    ○三人で来て順番に裸になる
    なんだか不穏。健康診断かもしれないが。

    ○夜濯の夫よ三番から歌ふ
    しかもエンディングに行かずまた三番の頭に。

    ○悪者に憧れてゐる夏休み
    まさに夏休みを支配する感情。

    ○神輿行く凡そ半分担がずに
    いい加減なのも祭礼の一側面か。

    ○非凡なる泳ぎを教へたのは誰
    世界水泳ですね。

    ○鬼退治されたる鬼が島の夏
    寂しい。

    ○後退るやうに進みし蟇蛙
    類想感もある気がするけど、確かに。

    ○退けば広くなる海青岬
    不思議な地形。

    ○常駐の管理人室メロンの香
    noka が二回出てくるのが良い響き。

    ○西瓜はなぜ永世中立国なのか
    謎。

    ○彼の人に彼氏がゐるといふ大暑
    暑い中の大事件。「彼」の字二つとka の頭韻の心地良さ。

    ○片蔭にある牢獄のやうな窓
    ある。小さくてやや高いところにあって。暑そう。

    ○籐椅子に謝る時を待つてゐる
    膝を抱えて。

    ○驟雨みな大慌てなる大通り
    みな大慌てなる大通り、って(不謹慎だけど)コントみたいで楽しそう。

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  2. ○三人の真中に置かれ西瓜かな
    形も色もきれい。2355のお休みソングみたい。

    ○弁当ののちの車中の三尺寝
    狭いけどきもちよさそお。

    ○悪者に憧れてゐる夏休み
    夏休みの気分がよく出てる。悪者とはよくいった。

    ○歌舞伎者のごとくに潰すトマトかな
    トマトがかわいそうですが、赤が効いてますなあ。

    ○水槽に静かな患者たちの夏
    青ざめてどこか現実ではないような。

    ○満月に忍者が軽くうなづいた
    影の中で次の作戦でしょうか。

    ○萍や者共じっと控えおり
    忍者の仲間か狙われている側でしょうか。
    萍の不気味さがよい。

    ○世志凡太東京ぼん太夏さみし
    寄席関係はなぜ夏が一番あうのだろう。
    明るくてかなしいからかな。

    ○凡例にある色全て使ふ虹
    特色はないのかな?

    ○衰退の街昼顔にふちどられ
    昼顔の儚さで納得。

    ○早退の者ら集へる泉かな
    この泉はだからこそ大事な記憶へ。

    ○退場の赤あざやかなかき氷
    退場の赤にシビレました。

    ○干し草のなかに隠れてねむる莫迦
    そんな莫迦があたしゃ好きだ!

    ○生命線二つ開きし暑さかな
    すげー。長生きしそう。暑くてもエネルギーばんばんだね。

    ○恋人でなかつた頃の冷し酒
    そういうときもありました・・・かねえ。

    返信削除
  3. ○三人で来て順番に裸になる
    順番に、が不穏。単に暑かっただけだったり…。

    ○夜濯の夫よ三番から歌ふ
    いい旦那ですね。

    ○悪者に憧れてゐる夏休み
    夏休み感あるある。

    ○満月に忍者が軽くうなづいた
    忍者「らしさ」がおかしい。

    ○論者みな広間に集ふ西瓜かな
    なんの集まりでしょうか。レトロ感満載。

    ○九回の凡打で終る夏の果
    素直な読みぶりに好感。

    ○世志凡太東京ぼん太夏さみし
    そうね。あの芸ともいえぬ芸風が懐かしい。

    ○平凡な夫婦の夜の蚊遣り香
    キンチョー蚊取り線香の匂いでしょうか。穏やかな夏の宵。

    ○凡例のごとくに冷し中華かな
    いろいろ盛られているのに主役にはなれない。

    ○鬼退治されたる鬼が島の夏
    シーンと静かな島が海に浮かんでいます。

    ○衰退の街昼顔にふちどられ
    昼顔ぼんやりとした明るさや強靱さが辛い。

    ○退屈な短編小説まくはうり
    瓜のいまや古くさくなった感じとか、なんだか納得。

    ○常駐の管理人室メロンの香
    いつもお世話になりますとか言われた頂き物なんでしょうか。住人としてはちょっと気になったりして。

    ○西瓜はなぜ永世中立国なのか
    なぜと言われましても。そうなんですか。

    ○驟雨みな大慌てなる大通り
    そりゃそうでしょなんですが、大慌て、大通り、の「おお」が実によいです。

    返信削除
  4. 暑いので簡潔に。

    ○夏の夜の三面鏡に我われ吾
    怪談

    ○三人で来て順番に裸になる
    3P

    ○夜濯の夫よ三番から歌ふ
    音痴

    ○編集者登山小屋から催促す
    C調

    ○神輿行く凡そ半分担がずに
    怠慢

    ○非凡なる泳ぎを教へたのは誰
    直伝

    ○凡例のごとくに冷し中華かな
    堅物

    ○蚊柱と痴漢撃退グッズかな
    眩暈

    ○退けば広くなる海青岬
    錯覚

    ○中退の人とたのしむ冷素麺
    無味

    ○常駐の管理人室メロンの香
    過分

    ○西瓜はなぜ永世中立国なのか
    自由

    ○閉店の告知貼りつつ生ビール
    複雑

    ○片蔭にある牢獄のやうな窓
    嵌殺

    ○恋人でなかつた頃の冷し酒
    悪妻

    返信削除
  5. ○夜濯の夫よ三番から歌ふ
    三番を思い出して嬉しかったのでしょう。

    ○悪者に憧れてゐる夏休み
    デスラーとか。

    ○夏風邪の患者がひとり宙に舞ふ
    どうぞお大事に。

    ○歌舞伎者のごとくに潰すトマトかな
    勢いがいいです。

    ○行水の水を惜しむも小者かな
    水不足ですからね。

    ○満月に忍者が軽くうなづいた
    指令心得たり。

    ○神輿行く凡そ半分担がずに
    世の中不公平です。

    ○非凡なる泳ぎを教へたのは誰
    人より早く泳げるのか、それとも遅いのか。

    ○凡人としてナイターを観戦す
    舞台には立てませんが。

    ○凡人へ踏切ひらく立葵
    踏み切りは誰にも平等に開きます。

    ○凡例にある色全て使ふ虹
    やってみたかったです。

    ○閉店の告知貼りつつ生ビール
    閉店後のことは置いといて、とりあえずビール。

    ○片蔭にある牢獄のやうな窓
    窓から何かの影が見えます。

    ○恋人でなかつた頃の冷し酒
    あの頃が懐かしい?

    ○驟雨みな大慌てなる大通り
    店の中から見ている分には滑稽、外にいたら大変。

    返信削除
  6. ○夏夕べ三段登るチャペルあり
    三段でも「登る」覚悟が要るのです。

    ○三振のあと膨大な草いきれ
    打者の悔しさ情けなさが。

    ○三人で来て順番に裸になる
    どういう場面なのか、あれこれ妄想します。

    ○三人の真中に置かれ西瓜かな
    老眼が進んで「背中」と読んで「すごい罰ゲーム!」とのけぞりましたが、「真中」でよかった。

    ○影武者の集まつてゐる独活の花
    雰囲気があります。

    ○編集者登山小屋から催促す
    催促される方は「くそーっ」ですね。

    ○非凡なる泳ぎを教へたのは誰
    オリンピック選手も新鋭が続々。あるいは古式泳法か。

    ○平凡な夫婦の夜の蚊遣り香
    昨日に変わらぬ今日。

    ○凡例にある色全て使ふ虹
    何の本だろう。

    ○蚊柱と痴漢撃退グッズかな
    この二つがあれば寄ってきません。

    ○後退るやうに進みし蟇蛙
    そんな感じ。

    ○衰退の街昼顔にふちどられ
    ニュータウンを思い浮かべました。

    ○船虫は退却したり笑むごとく
    「笑むごとく」がうまいです。

    ○常駐の管理人室メロンの香
    お裾分けなんでしょうね。

    ○西瓜はなぜ永世中立国なのか
    ここでしかお目にかかれない句です。

    返信削除
  7. ○三振のあと膨大な草いきれ
    豪快なスイングでした。
    ○三人で来て順番に裸になる
     奇妙で可笑しい。
    ○悪者に憧れてゐる夏休み
     悪者の漠然さが憧れには欠かせません。
    ○影武者の集まつてゐる独活の花
     斬っても際限なく増えていきそう。 
    ○行水の水を惜しむも小者かな
     小者の生活感が出てます。
    ○水槽に静かな患者たちの夏 
     死に近い清涼さ。
    ○論者みな広間に集ふ西瓜かな
     活発な雰囲気が西瓜ならでは。
    ○九回の凡打で終る夏の果
     空を見る感じ。
    ○凡人へ踏切ひらく立葵
     誘われているようで怖い。
    ○鬼退治されたる鬼が島の夏
     残った鬼の手で復興し始めていると想像。
    ○後退るやうに進みし蟇蛙
     確かに歩くという動きではない。
    ○衰退の街昼顔にふちどられ
     ふちどりはやや言い過ぎかも。
    ○早退の者ら集へる泉かな
     はて現世でしょうかこの泉は。
    ○生命線二つ開きし暑さかな
     すごくいい。これは暑い。
    ○母親の見てゐる前で雲の峰
     とてつもないエロティックな何か。

    返信削除
  8. ★三振のあと膨大な草いきれ
     どっと疲れる感じ。

    ★三人で来て順番に裸になる
     何が始まるのか。

    ★夕焼にほどよきサイズ三ノ宮
     三ノ宮、程よいかも。

    ★悪者に憧れてゐる夏休み
     実際になろうと思ってもなれるもんじゃない。

    ★論者みな広間に集ふ西瓜かな
     広間、なぜか懐かしい。

    ★平凡な夫婦の夜の蚊遣り香
     平凡だけど幸せそう。

    ★凡人としてナイターを観戦す
     それは私です。

    ★蚊柱と痴漢撃退グッズかな
     痴漢撃退グッズが俳句で詠まれたのは初めてなのでは。

    ★早退の者ら集へる泉かな
     うっすらとした背徳感。

    ★退学の少年の指かきごほり
     アウトローにはアウトローの生き方がある。

    ★白靴に履き替え今朝は退院す
     前向きな一日の始まり。

    ★西瓜はなぜ永世中立国なのか
     なぜだろう。

    ★大夕焼死ぬまで踊るボレロかな
     愛し続けるボレロです。

    ★明後日になればわかるよバナナの斑
     バナナも食べごろに。

    ★籐椅子に謝る時を待つてゐる
     タイミングを間違えるととんでもないことに。

    返信削除
  9. ○羽蟻摘む三つ目なれば逃がしたり
    怖いです。

    ○掬はれし金魚三匹死はまちまち
    一匹は自殺。

    ○午前三時放送休止夜の秋
    静かです。

    ○三人の真中に置かれ西瓜かな
    夏休みの家族の風景。

    ○夜濯の夫よ三番から歌ふ
    歌詞が気に入ってるんです。

    ○夏風邪の患者がひとり宙に舞ふ
    痩せてます。

    ○論者みな広間に集ふ西瓜かな
    熱い人たち。

    ○世志凡太東京ぼん太夏さみし
    やはり、さみしいですね。

    ○凡庸な面子の揃ふ夏祭り
    凡庸がいいのです。

    ○凡例のごとくに冷し中華かな
    このごろは冷し中華もバラエティに富んでます。

    ○衰退の街昼顔にふちどられ
    昼顔のデカダンス。

    ○早退の者ら集へる泉かな
    きれいな泉なのでしょう。

    ○退場の赤あざやかなかき氷
    レッドカード。

    ○干し草のなかに隠れてねむる莫迦
    刺されます。

    ○母親の見てゐる前で雲の峰
    人気AVシリーズ。

    返信削除
  10. ○夏夕べ三段登るチャペルあり
    「三」からこういう世界を導き出すとは。その技巧を頂きます。

    ○三界の炎に灼かれ御徒町
    御徒町が大変なことになっています。

    ○三振のあと膨大な草いきれ
    草いきれに「膨大」という表現を使ったところが面白いです。三振との関係の謎も良し。

    ○夜濯の夫よ三番から歌ふ
    侘しい景なんですけど、「三番から歌ふ」が滑稽でバランスが取れています。

    ○お見合いパーティ司会者の汗まみれ
    まとめる方も必死です。

    ○易者には解らぬ道や南風吹く
    風に吹かれ我が道を行く。よろしいかと。

    ○兄者と呼ばれ飲む酒辛し船遊
    おだてられて飲む酒も、ときには辛いものです。

    ○水槽に静かな患者たちの夏
    水槽越しに見える患者たち。静かな闘病。

    ○早野凡平の帽子や夏料理
    ディナーショーでしょうか。早野凡平の芸を知る人も少なくなりました。

    ○凡例にある色全て使ふ虹
    凡例に見つけたカラフルな世界。

    ○凡例のごとくに冷し中華かな
    この直喩は侮りがたいです。

    ○蚊柱と痴漢撃退グッズかな
    どういう関係にあるのかよくわからないところが面白いです。

    ○衰退の街昼顔にふちどられ
    昼顔の生命感と衰えゆく街との対比。

    ○客船と五色のテープ雲の峰
    夏らしい出航シーン。過不足ない写生が良いです。

    ○西瓜はなぜ永世中立国なのか
    やられた感あり。悔しいけれど、面白い。

    返信削除
  11. ○羽蟻摘む三つ目なれば逃がしたり
    面倒くさくなったのか憐憫か。摘むという表現が新鮮でした

    ○三振のあと膨大な草いきれ
    膨大がいいですね。

    ○三人の真中に置かれ西瓜かな
    三人はほどよい感じかと。

    ○夜濯の夫よ三番から歌ふ
    三番しか覚えていないのです。

    ○お見合いパーティ司会者の汗まみれ
    お見合いパーティーを詠んだ句を初めて見ました。

    ○悪者に憧れてゐる夏休み
    悪者、って漠然としていますね。きっと良い子なのですね。

    ○平凡な夫婦の夜の蚊遣り香
    ひたすら平らかに。

    ○凡庸な面子の揃ふ夏祭り
    それが意外と楽しいのです。

    ○後退るやうに進みし蟇蛙
    そうですか?今度観察してみよう。

    ○退けば広くなる海青岬
    海に圧倒されます。

    ○白靴に履き替え今朝は退院す
    白靴に希望あり。

    ○生命線二つ開きし暑さかな
    これは暑そうですね。

    ○閉店の告知貼りつつ生ビール
    感慨に耽っているのか呑気なのか。

    ○恋人でなかつた頃の冷し酒
    冷し酒が渋い。

    ○驟雨みな大慌てなる大通り
    引きのカメラワーク。

    返信削除
  12. ○掬はれし金魚三匹死はまちまち
    下五の字余りがよいですね。

    ○三振のあと膨大な草いきれ
    膨大な、という比喩が面白いです。

    ○三人で来て順番に裸になる
    三という数字の面白さ。

    ○夜濯の夫よ三番から歌ふ
    本当に好きだから三番から歌うのです。

    ○夕焼にほどよきサイズ三ノ宮
    行ったことはないのにほどよきサイズであることがよくわかる不思議。

    ○影武者の集まつてゐる独活の花
    本物に叛旗を翻そうとしているのでしょうか。不穏です。

    ○兄者と呼ばれ飲む酒辛し船遊
    今時兄者と呼ばれることはありません。貴重です。

    ○萍や者共じっと控えおり
    神妙に控えている姿がけなげです。

    ○凡庸な面子の揃ふ夏祭り
    心沸き立たないお祭りですが、リアルであることこの上ない。

    ○凡例のごとくに冷し中華かな
    凡例句の中ではこれが一番面白いです。

    ○早退の者ら集へる泉かな
    それは知る人ぞ知る森の中の泉。

    ○干し草のなかに隠れてねむる莫迦
    この莫迦は普段は丘の上にいるのかも。

    ○彼の人に彼氏がゐるといふ大暑
    彼の人が男だろうが女だろうが、彼氏がいても何ら不思議はないのに、ぎょっとするのは季語のせいでしょうか。

    ○片蔭にある牢獄のやうな窓
    中七の比喩がいいですねえ。思わず「明日のためのメモ」を投げ入れたくなります。

    ○母親の見てゐる前で雲の峰
    何をしていてもとてつもなくいけないことに思えます。

    返信削除
  13. ○夏雲や三人ゐれば二人つく
    「つく」は舌足らずですが、「くっつく」と解しました。俗なネタを「夏の雲」がうまい具合に中和。

    ○掬はれし金魚三匹死はまちまち
    「死はまちまち」なんですよね。金魚に限らず。

    ○午前三時放送休止夜の秋
    その時間まで見ていたということに、なんだか感心しました。

    ○三人で来て順番に裸になる
    一斉ではなく順番に、がちょっと不思議な感じ。この「来て」や「裸」は、性風俗な方向にも誤読しました。

    ○夜濯の夫よ三番から歌ふ
    三番が歌えるはすごい。でも近所から文句を言われそう。

    ○夕焼にほどよきサイズ三ノ宮
    神戸三ノ宮と解しました。神社とも読めますが、サイズという語が繁華街ぽいので。

    ○お見合いパーティ司会者の汗まみれ
    行ったことないのに「目に浮かぶよう」なんて言ったらダメかもしれませんが、目に浮かぶ。プロダクションから派遣されてきた肥満気味の司会者。

    ○夏風邪の患者がひとり宙に舞ふ
    「宙に舞ふ」という誇張がなんかおもしろいです。本人は高熱で宙を舞っているみたいかもしれないですし。

    ○水槽に静かな患者たちの夏
    映画の惹句、予告編の大仰な字幕のようです。

    ○凡人へ踏切ひらく立葵
    踏切は万人に平等?

    ○船虫は退却したり笑むごとく
    「笑むごとく」は、わかるようでわからない。「わかる」と「わからない」のあわい感がいいです。

    ○早退の者ら集へる泉かな
    青春ぽい。田舎の。

    ○彼の人に彼氏がゐるといふ大暑
    「大暑」二文字ですごく可笑しくなりましたね。

    ○片蔭にある牢獄のやうな窓
    ビルの裏側の小さな窓。これをよく詠んだなあ、と。

    ○恋人でなかつた頃の冷し酒
    キマリ過ぎているのがちょっと難ですが、いただきます。

    返信削除
  14. ○三界の炎に灼かれ御徒町
    混沌としています。

    ○三振のあと膨大な草いきれ
    膨大な、で納得。

    ○夜濯の夫よ三番から歌ふ
    三番の歌詞がお気に入り。

    ○夕焼にほどよきサイズ三ノ宮
    距離感がいいです。

    ○水槽に静かな患者たちの夏  
    水槽越しに。

    ○世志凡太東京ぼん太夏さみし
    リズムに好感。

    ○凡人としてナイターを観戦す
    凡人が一番気楽です。w

    ○凡人へ踏切ひらく立葵
    当たり前の向こうにある世界。

    ○後退るやうに進みし蟇蛙
    ちょっとふてぶてしくて。

    ○早退の者ら集へる泉かな
    癒しの泉。

    ○退屈な短編小説まくはうり
    薄味な感じで・・・。

    ○白靴に履き替え今朝は退院す
    白靴がいいですね。

    ○西瓜はなぜ永世中立国なのか
    いつまでもみずみずしいんです。

    ○大夕焼死ぬまで踊るボレロかな
    夕焼の色とボレロの情熱!

    ○籐椅子に謝る時を待つてゐる
    近づくタイミングが難しいんです。

    返信削除
  15. ○夏夕べ三段登るチャペルあり
     読めないラテン語が書いてありそうです。
     
    ○熱狂の三軒茶屋を出て涼し
     芝居がはけたところでしょうか。
     
    ○弁当ののちの車中の三尺寝
     「の」の連鎖と「車中の三尺寝」という早口言葉のような響きがいいです。
     
    ○夜濯の夫よ三番から歌ふ
     昨今の歌はAメロだのBメロだのサビだのあって、どこから二番だか三番だか分からないので、これは文部省唱歌みたいな古格の歌で、夫の年齢が窺い知れ、そういう夫が夜濯している健気さのようなものが感じられます。

    ○裸の子三人くらゐみつくろひ
     エレキが不良の音楽だった頃の雰囲気が感じられます。

    ○悪者に憧れてゐる夏休み
     これ、「夏休み」がすごく効いていますね。一人の時間をもてあましている感じがします。

    ○影武者の集まつてゐる独活の花
     演技指導でも受けるのでしょうか。「独活」の字面が効いています。

    ○満月に忍者が軽くうなづいた
     「に」がいいですね。

    ○神輿行く凡そ半分担がずに
     だらだらしていてよいです。

    ○凡例のごとくに冷し中華かな
     確かにあの具の並べ方は、どこか「凡例のごとく」ですねえ。

    ○退けば広くなる海青岬
     被写体と背景のバランスを気にしている様子でしょうか。

    ○白靴に履き替え今朝は退院す
     おめでとうございます。

    ○恋人でなかつた頃の冷し酒
     五臓六腑のすみずみまで恋が行き渡って、味がまるで変わってしまったのですね。

    ○籐椅子に謝る時を待つてゐる
     「に」がいいですね。

    ○驟雨みな大慌てなる大通り
     驟雨、で切れるのだろうなあ。強引な切断に臨場感があります。

    (以上)

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