2012年9月2日日曜日

作者発表句会・投句一覧

【作】
あの月は古い贋作ですといふ
贋作の林檎ひとつの赤すぎる
作陶のなめらかな指水の秋
手作りのとろろ手作りのヴァイオリン
松手入推理作家の家らしき
容赦なく餃子の皮作って秋思
邯鄲や何つくるともなく作家

【者】
駅前の易者そろそろをる夜涼
会者定離(えしゃじょうり)会者定離とてちちろ虫
検非違使の者か毟れよ蝦葛
秋灯や著者近影の嘘つぽき
忍者死して気配を残す虫の声
洋梨と同居してゐる果報者
落武者のような案山子を先頭に

【発】
あらあらしき雌鹿の息や地震発生
一声を発し銀漢跳び越える 
行く夏や発光体は海に置き
発言の度に案山子を見てゐたる
発光を抑へるやうに秋刀魚焼く
発酵の香とすれ違ふ秋日傘
発端は逃れやうなき月明り
発破鳴り山ごと小鳥羽ばたけり
発奮の左足から虫すだく
霧より発砲フーマンチュー溶けつ

【表】
秋茜乱数表に従はず
秋早し表参道ヒルズなら
新涼やポートレートの無表情
長き夜の恋よ表面張力よ
表より裏の親しき秋の蝉
表玄関に西瓜がやってくる
裏庭の実ざくろ表より見えず

【当季雑詠】
以上でも以下でもなくて秋刀魚焼く
鰯雲線路の上に人在らば
奇数月の奇数日ばかり震災忌
興行の撤収早しねこじやらし
親指を握った拳地虫鳴く
親不知すんなり抜けて秋暑し
娘らを二百十日の御猪口とす

(以上)

7句選(特選、逆選なし)
選句締切:9月5日(水)24時(JST)
投稿先:恒信風句会
http://koshinfu.blogspot.com/

題に関わらず全体から7句選にてお願い致します。
整理の都合上、句の順番はそのままにして下さい。
投句一覧へのコメントとして、投稿して下さい。その際、名前/URLというのを選択して、俳号もしくはご本名を入力して下さい。URLは入れなくてよいです。
なお、右側の「最近のコメント」という欄は反映するのに時間がかかるようです。

ではよろしくお願い致します。

7 件のコメント:

  1. ○作陶のなめらかな指水の秋
     みずみずしい土が見えてくるようです。

    ○一声を発し銀漢跳び越える
     「一声を発し」のリアリティがよいです。

    ○発言の度に案山子を見てゐたる
     この、気もそぞろ感がよいです。

    ○発端は逃れやうなき月明り
     おっ、恋の始まりか。

    ○秋茜乱数表に従はず
     もちろん秋茜で切れるのでしょうが、うじゃうじゃ感があります。

    ○裏庭の実ざくろ表より見えず
     調べた訳じゃないけど、石榴って石蕗、八つ手、青木などと並び裏庭の定番植物なのでしょうか。

    ○興行の撤収早しねこじやらし
     きょうびの何とかフェスティバルみたいなのの出店って、けっこう早い時間から撤収しますよね。すべてが嘘だったかのような「ねこじやらし」がいいです。

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  2. ★作陶のなめらかな指水の秋
    「なめらかな」が上手。

    ★忍者死して気配を残す虫の声
    気配を残しちゃうのね。駄忍者といったところか。

    ★落武者のような案山子を先頭に
    落武者のような案山子、時々見ます。先頭ってなんだろ。

    ★一声を発し銀漢跳び越える
    ウーヤーターって感じかしら。
     
    ★長き夜の恋よ表面張力よ
    表面張力になにやら思うところあり。

    ★表玄関に西瓜がやってくる
    いいないいな。西瓜はやってくるものなのね。

    ★娘らを二百十日の御猪口とす
    なんかエロい。

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  3. ○松手入推理作家の家らしき
    ずいぶん気の早い松手入ですね。家の雰囲気がそうなのか何なのか、微妙な感じがよいです。

    ○邯鄲や何つくるともなく作家
    やはり「モノ」をつくらなければ。季語絶妙。

    ○検非違使の者か毟れよ蝦葛
    「えびかずら」と読み「葡萄」の和名とは…勉強になりました。時代がかった物言いも好き。

    ○落武者のような案山子を先頭に
    案山子コンテストでしょうか。今年は大河ドラマ関連のもの、ありそうな、なさそうな。個人的には結構ハマッてますが。

    ○発端は逃れやうなき月明り
    恋のような、事件のような。

    ○霧より発砲フーマンチュー溶けつ
    思い掛けなくなつかしい人に会ったようなビックリ感があります。溶けているのは麩マントウとも。

    ○新涼やポートレートの無表情
    この写真は白黒だと思う。

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  4. ○あの月は古い贋作ですといふ
    あの月のことなのかなあ。贋作というのがいい。1000年も生きた大妖が言っているかのよう。

    ○邯鄲や何つくるともなく作家
    不思議な句。ぼんやりとやる気も起きないのだろうか。

    ○検非違使の者か毟れよ蝦葛
    検非違使!という言葉が出るだけで驚き。毟られるというのもなんだか可笑しい。
     
    ○行く夏や発光体は海に置き
    夏の終わりに海に置く発行体ってなんだろう。いろいろと考える。

    ○発言の度に案山子を見てゐたる
    まるで案山子に人生を握られているかのような錯覚に。

    ○発端は逃れやうなき月明り
    むむう、これはびびびっときている。恋だな。

    ○秋茜乱数表に従はず
    まあそりゃそうなんだけど。気付いたら秋茜が増殖してえらいことになっているというようなこと、ありました。

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  5. ○作陶のなめらかな指水の秋
     水の秋という季語がすっと入ってきますね。指から浸透してくる秋。

    ○松手入推理作家の家らしき
     アイデア出ないのかしら。

    ○駅前の易者そろそろをる夜涼
     えき・えきの韻を楽しみつつ、そぞろ歩いている感じがいいですね。

    ○発言の度に案山子を見てゐたる
     案山子に同意を求めても。

    ○長き夜の恋よ表面張力よ
     ぎりぎりなんだなあ。息が詰まります。

    ○表より裏の親しき秋の蝉
     昨今の造語で、セミ・ファイナルというやつですね。毎朝お目にかかってます。

    ○裏庭の実ざくろ表より見えず
     そらそーや。でもきっと裏庭ではたわわに実ってるのでしょう。


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  6. 作陶のなめらかな指水の秋
    秋のしづけさ。

    ○松手入推理作家の家らしき
    ひょうひょうとした語りが面白い。

    ○邯鄲や何つくるともなく作家
    その遊びの時間が実は大切なのです。w

    ○秋茜乱数表に従はず
    乱数表と秋茜が響きあう。

    ○長き夜の恋よ表面張力よ
    いっぱいいっぱいな恋の緊張感。

    ○表玄関に西瓜がやってくる
    やってくる、のわくわく感がいいです。

    ○興行の撤収早しねこじやらし
    またもとの原っぱに。。

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  7. ●あの月は古い贋作ですといふ
    オリジナルさがしもやがて可能に。

    ●贋作の林檎ひとつの赤すぎる
    意図的な所業かも。

    ●検非違使の者か毟れよ蝦葛
    孔子一行は赫い梨でした。

    ●洋梨と同居してゐる果報者
    下半身安産型の奥さんでしょうか。

    ●発奮の左足から虫すだく
    奮い立った気持ちを激しい虫の声に重ね
    「やっ」と踏み出した片足。自分を叱咤する様子に共感。

    ●以上でも以下でもなくて秋刀魚焼く
    アナログ的つぶやき、善き哉、よきかな。

    ●親指を握った拳地虫鳴く
    内にこもった気持ち、やり場は句に限ります。

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