2012年10月29日月曜日

伸縮自在句会・投句一覧

【伸】
かにかくに山中伸弥水澄めり
稲妻に手足伸ばして眠りけり
黄落の方へ伸ばせる亀の首
脚伸ばしきり銀漢にとどきそう
秋天へ爪先立ちに背伸びして
小春日のやんなつてゐる牧伸二
象亀の首伸び切りし秋の昼
伸びしろのあると言はるる唐辛子
伸び伸びと飛行機雲に芒かな
吹き硝子ぷんと伸ばされ秋夕焼

【縮】
さてと首縮め冬眠いたしけり
しづしづと蓑虫の糸縮みをり
蛇穴に入る縮こまる真似をする
縮れ麺箸にからむや後の月
縮尺を変へてつぎつぎ露の玉
啄木鳥の首の縮みし刹那かな
転倒にはじまる萎縮草の絮
二人してゆっくり銀漢を濃縮
番長の縮尺ちがふ秋の暮

【自】
その自信どこから来るの枯尾花
紅葉づれる坂も自動車教習所
行く秋の鐘ひとつ鳴るのど自慢
自惚れて蓑虫開く水盤に
自然薯をもて余したる三次会
自他共に認めてゐたるねこじやらし
自打球の当たりしごとく黄落す
自動ドアひらき黄落また黄落
自分から自分を剥がす銀木犀

【在】
すすき原不在の人の声のある
芋虫に点在したる風の穴
引力の始まる自在鉤や秋
柿熟るる不在者財産管理して
月光や不在証明とはならぬ
主不在裂けてはならぬ柘榴の実
駐在所机の上に柿ふたつ
長き夜の自由自在を紐解きぬ
点在のこんなところに曼珠沙華
冷まじき現在地点赤くあり

【当季雑詠】
あめつちに長き夜よりも長き雨
ハロウィンの仮装のままの雨宿り
絵草子展出口へスズメと稲雀
銀翼を空に放ちて神の留守
鶏頭のかたまり迂回して義妹
時どきは目の合うきのこ合はぬきのこ
少年の手くらがりより青木の実
中心の固き林檎や朝まだき
流星を洋酒の瓶の底に飼う
咬む力咆ゆる力や十三夜

(以上)

9句選(特選、逆選なし)
選句締切:10月31日(水)24時(JST)
投稿先:恒信風句会
http://koshinfu.blogspot.com/

題に関わらず全体から9句選にてお願い致します。
整理の都合上、句の順番はそのままにして下さい。
投句一覧へのコメントとして、投稿して下さい。その際、名前/URLというのを選択して、俳号もしくはご本名を入力して下さい。URLは入れなくてよいです。
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ではよろしくお願い致します。

9 件のコメント:

  1. ☆かにかくに山中伸弥水澄めり
    ついに受賞に爽やか感ありますね、山中氏。

    ☆小春日のやんなつてゐる牧伸二
    人名の喚起力の強さに、ううむ。

    ☆象亀の首伸び切りし秋の昼
    秋の昼としかいいようがないですね。

    ☆二人してゆっくり銀漢を濃縮
    二人の上でどんどん濃くなる天の川。勝手にしてよ。

    ☆紅葉づれる坂も自動車教習所
    教官とともに。

    ☆芋虫に点在したる風の穴
    あの点々が風の穴ってことなのかな。というより、芋虫に哀

    しみのよう無情のようななものを見たのだろう。

    ☆駐在所机の上に柿ふたつ
    駐在所…大滝秀治も亡くなった。そんなこと思いつついただきます。

    ☆少年の手くらがりより青木の実
    色だけではなく、「あおき」の音も効果を出している。

    ☆咬む力咆ゆる力や十三夜
    自然に生きる獣でしょうか。月煌々ですね。

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  2. ○黄落の方へ伸ばせる亀の首
    セントラルパークにいます、この亀。

    ○しづしづと蓑虫の糸縮みをり
    「しづしづ」がいいです。

    ○縮尺を変へてつぎつぎ露の玉
    あはは、いろいろなサイズありますものね。

    ○行く秋の鐘ひとつ鳴るのど自慢
    聴こえてくるから不思議です。

    ○自打球の当たりしごとく黄落す
    なんだか痛そうですね。

    ○柿熟るる不在者財産管理して
    これも不在者の財産のうちなんでしょうね。おいしそうなのに。

    ○駐在所机の上に柿ふたつ
    ほほえまし。

    ○あめつちに長き夜よりも長き雨
    夜通しの雨ありますね。

    ○ハロウィンの仮装のままの雨宿り
    お互い見合わせて笑っちゃいますね。

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  3. ○黄落の方へ伸ばせる亀の首
    何にでも興味がわくのですね。

    ○小春日のやんなつてゐる牧伸二
    小春日はこんな感じかも。

    ○象亀の首伸び切りし秋の昼
    立派なゾウガメが見えてきました。

    ○しづしづと蓑虫の糸縮みをり
    しづしづが何気に効いています。

    ○自動ドアひらき黄落また黄落
    近くのカフェからもうすぐ見えます。

    ○引力の始まる自在鉤や秋
    引力と自在鉤と秋のコラボ。

    ○柿熟るる不在者財産管理して
    雑草だらけの庭に赤き実り。

    ○ハロウィンの仮装のままの雨宿り
    日本でも最近はさもありなんなのかも。

    ○流星を洋酒の瓶の底に飼う
    浪漫がありますね。

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  4. ○稲妻に手足伸ばして眠りけり
    反射的にちぢこまってしまいますが、ぴくりともせず爆睡?

    ○黄落の方へ伸ばせる亀の首
    大型の亀なんだろう。ジョージ君を偲びつつ。

    ○小春日のやんなつてゐる牧伸二
    年がら年中やんなっていたのだが、季節感ぷったり。

    ○伸びしろのあると言はるる唐辛子
    いい誉め言葉ですね。

    ○さてと首縮め冬眠いたしけり
    ああ、いいなあ。

    ○自惚れて蓑虫開く水盤に
    へぇー、水に入れると開くんですか? 「自惚れて」がいいですね。

    ○自然薯をもて余したる三次会
    アタマも口べたもどろんどろん。

    ○自打球の当たりしごとく黄落す
    巧みな比喩です。

    ○自分から自分を剥がす銀木犀
    剥がしたいです。

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  5. ★黄落の方へ伸ばせる亀の首
     美しい方へ首を伸ばすのですなぁ。

    ★小春日のやんなつてゐる牧伸二
     牧師匠、歌上手です。

    ★縮れ麺箸にからむや後の月
     この切れ字、やけに可笑しい。

    ★縮尺を変へてつぎつぎ露の玉
     縮尺を変えていたのね。

    ★二人してゆっくり銀漢を濃縮
     艶っぽい秋の夜。

    ★紅葉づれる坂も自動車教習所
     坂道発進。

    ★自動ドアひらき黄落また黄落
     自動ドアがなかなか。

    ★点在のこんなところに曼珠沙華
     群れ咲きながら点在しているところ、曼珠沙華らしい。

    ★ハロウィンの仮装のままの雨宿り
     傘貸したくなっちゃうな。

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  6. ○稲妻に手足伸ばして眠りけり
    このおおらかさがいいですね。

    ○さてと首縮め冬眠いたしけり
    見たことないのですがそんな気がします。

    ○縮尺を変へてつぎつぎ露の玉
    大小あることを、上手に表現されています。

    ○二人してゆっくり銀漢を濃縮
    かなり熱いふたりですね。あてられそうです。

    ○自分から自分を剥がす銀木犀
    ひりひりしています。銀木犀が美しいです。

    ○芋虫に点在したる風の穴
    なんだか芋虫が心配な感じですが、見過ごせないものがありました。

    ○引力の始まる自在鉤や秋
    具体物は自在鉤しかないのですがいろいろなものを感じさせます。

    ○点在のこんなところに曼珠沙華
    そう、曼珠沙華はこんな感じですね。

    ○流星を洋酒の瓶の底に飼う
    いい感じで格好つけています。

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  7. ○稲妻に手足伸ばして眠りけり
    我関せず、と。大人になるってこんな事。


    ○小春日のやんなつてゐる牧伸二
    ほんとはなってない。世のやんなったを引き受けて歌う細い目よ。


    ○象亀の首伸び切りし秋の昼
    気持ちのよいことです。


    ○しづしづと蓑虫の糸縮みをり
    このまま退場してしまいそう。


    ○蛇穴に入る縮こまる真似をする
    なんだかかわいいなあ。真似だけで縮めないのね。


    ○自動ドアひらき黄落また黄落
    ハッとしますね。かけぬけるか、立ち止まるか。

    ○引力の始まる自在鉤や秋
    秋があっているかどうかは少し悩みますが、その真っ直ぐな力に。


    ○銀翼を空に放ちて神の留守
    かっこいい。


    ○時どきは目の合うきのこ合はぬきのこ
    合ったらすかさず抜きましょう。

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  8. ○黄落の方へ伸ばせる亀の首
     風流をこころえている亀。

    ○しづしづと蓑虫の糸縮みをり
     普通伸びる糸を詠むでしょうに。

    ○縮尺を変へてつぎつぎ露の玉
     草間弥生大画伯の絵。

    ○自打球の当たりしごとく黄落す
     自打球って言葉はじめて。

    ○引力の始まる自在鉤や秋
     古道具が急にモダンに。

    ○冷まじき現在地点赤くあり
     事件性あり。

    ○ハロウィンの仮装のままの雨宿り
     このしっぽり感は日本ならではのもの。

    ○銀翼を空に放ちて神の留守
     宇宙探査は神へ気をつかいながら。

    ○咬む力咆ゆる力や十三夜
     月下の虎、余程の名画か。

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  9. ○かにかくに山中伸弥水澄めり
     あの方のあらゆる身のこなしから感じられる技術者の雰囲気がたまりません。まったくかにかくに澄んでおります。

    ○吹き硝子ぷんと伸ばされ秋夕焼
     「ぷんと」が絶妙です。「秋夕焼」はやや首をひねりますが…。

    ○二人してゆっくり銀漢を濃縮
     この破調ぶりがいいですねえ。

    ○行く秋の鐘ひとつ鳴るのど自慢
     「行く秋の鐘ひとつ鳴る」まではまったく月並俳句なのに、まさか「のど自慢」が来るとは思いませんでした。

    ○芋虫に点在したる風の穴
     ただの気門のことだと思うのですが、このように俳句に仕立てると、なんだかすごいことのようです。

    ○長き夜の自由自在を紐解きぬ
     前にもおんなじような句を見たような…。ところで、子どもの頃って受験参考書のコマーシャルってありましたよね。確か自由自在は♪うま~のマークのさ~んこうしょ。コント55号による「ばらシリーズ」もあった。

    ○ハロウィンの仮装のままの雨宿り
     あまり俳句の体をなしていないような気もするのですが、無性に可笑しいです。

    ○銀翼を空に放ちて神の留守
     「放ちて」の主語が曖昧であることによって、じつに広がりがありますね。

    ○少年の手くらがりより青木の実
     青春性の暴走かと途中まで読ませておいてはぐらかすのがにくいです。


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