2013年1月22日火曜日

広渡敬雄句会・投句一覧

 お待たせしました。

【広】
広辞林の表紙外れてゐて流氷
合コンの背広の胸の冬薔薇
四温晴れえくぼほがらに広間の子
事務始め机広々してゐたり
手を広げ倒れてみせる雪野原
春よりも春の隣の広さかな
待春の広間に背広吊るされて
着ぶくれて広東麺にたどり着く
冬うらら道を広げて遅刻します

【渡】
あぁ神よ渡る世間の福笑い
握り飯冷たし雨の渡月橋
手をあげて冬帽の列渡りゆく
手渡せる赤きバトンや冴返る
人類に渡月橋あり日脚伸ぶ
渡辺をなべちやんと呼ぶ春隣
渡来人の末裔として着ぶくれる
冬の橋渡る架空の家があり
風花の風のゆるゆる空渡る

【敬】
カーソルの産み落とす敬語理路整然
挨拶の敬語やわらか餅を焼く
敬礼の指の反りけり冬怒涛
敬虔なふりをしている冬桜 
肩張つて敬具と結ぶ寒見舞
枯葉枯葉妻が敬語を使ひけり
尊敬に値してゐる海鼠かな
北風は敬称略でかまわない

【雄】
英雄の好みさうなる雪をんな
英雄伝説氷柱いつぽん折れてをり
春近き雌雄異体でありにけり
雪もよひ雌雄決する盤に座す
丹頂や雄弁なるも神の業
盤上の敗者雄弁寒波来る
雄鶏の鶏冠のさかの初日の出
雄猫の宿命ヒトに定められ
雄蘂より雌蘂に似たる春の闇

【当季雑詠】
コロッケの揚げたてなるを日脚伸ぶ
ひと仕事終えて懐炉を取り出しぬ
ぼたん雪ちちはは死んでから止まず
愛嬌をふりまく尻尾日向ぼこ
牛撫づる小さきてのひら春浅し
残る雪また少し汚れてしまひ
人気なき隣の駅に日脚伸ぶ
大寒のメール「ごめん」と打ち始む
大仏の胡坐股座大神楽
朝ぼらけ一の字を書くずれ眼鏡
冬のビルが林檎ジュースに透けてゐる
幅広の運動靴やヒヤシンス
零戦の小さきプロペラ雪催

(以上)

9句選(特選、逆選なし)
選句締切:1月24日(木)24時(JST)
投稿先:恒信風句会
http://koshinfu.blogspot.com/

題に関わらず全体から9句選にてお願い致します。
整理の都合上、句の順番はそのままにして下さい。
投句一覧へのコメントとして、投稿して下さい。その際、名前/URL
というのを選択して、俳号もしくはご本名を入力して下さい。
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ではよろしくお願い致します。

9 件のコメント:

  1. ☆事務始め机広々してゐたり
    この気分、よーくわかるなー。

    ☆手をあげて冬帽の列渡りゆく
    可愛い。すぐに、みんな大人になってしまうんだと思うと、なおさら。

    ☆渡辺をなべちやんと呼ぶ春隣
    誰でも一人や二人の「なべちゃん」を知っている。

    ☆枯葉枯葉妻が敬語を使ひけり
    ははは。枯葉枯葉…怖いような、淋しいような。

    ☆雪もよひ雌雄決する盤に座す
    「三月のライオン」読んでます。

    ☆ひと仕事終えて懐炉を取り出しぬ
    ホッカイロでしょうか。ま、お茶でも。

    ☆愛嬌をふりまく尻尾日向ぼこ
    犬ねだろうなと。日向ぼこはかくあるべし。

    ☆残る雪また少し汚れてしまひ
    深読み禁止(笑)。昨日今日の東京はこんな感じ。

    ☆冬のビルが林檎ジュースに透けてゐる
    林檎ジュースの選択が秀逸。緑がかった色合いや甘酸っぱい味とか、ね。

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  2. ★広辞林の表紙外れてゐて流氷
    流氷とは意外な展開。

    ★着ぶくれて広東麺にたどり着く
    広東麺は場末の店が旨い。

    ★冬の橋渡る架空の家があり
    近づくと遠ざかったりするのだろうか。

    ★風花の風のゆるゆる空渡る
    風花だからこそ見えてくる風。

    ★挨拶の敬語やわらか餅を焼く
    餅を焼くときは、こういう心持がイイ。

    ★敬虔なふりをしている冬桜
    冬桜って確かに意外とふてぶてしかったりするかも。
     
    ★尊敬に値してゐる海鼠かな
    でも食べちゃうんだこれが。

    ★冬のビルが林檎ジュースに透けてゐる
    林檎ジュースの色合いよし。この林檎ジュース、牛乳瓶に入っているタイプのような気がする。

    ★幅広の運動靴やヒヤシンス
    ヒヤシンスとは随分と季節先取りだけど、いい感じ。

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  3. ○事務始め机広々してゐたり
     じつに正統の句ですね。

    ○手を広げ倒れてみせる雪野原
     引力にまかせて倒れるところが見えるようです。

    ○冬うらら道を広げて遅刻します
     「道を広げて」の措辞がいいですね。

    ○冬の橋渡る架空の家があり
     「架空の家」がじつにいいです。

    ○枯葉枯葉妻が敬語を使ひけり
     「枯葉枯葉」というリフレインにちょっとした狼狽を感じます。
     
    ○春近き雌雄異体でありにけり
     まあ人間のことなのでしょう。生殖をテーマとして「春近き」の斡旋がいいですね。

    ○雄猫の宿命ヒトに定められ
     「ヒト」の片仮名表記が生きていると思います。

    ○ぼたん雪ちちはは死んでから止まず
     心象風景なのでしょう。

    ○大仏の胡坐股座大神楽
     「アブラカタブラ」ならぬ「あぐらまたぐら」で大神楽まで行ってしまうところがいいです。


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  4. ○広辞林の表紙外れてゐて流氷
    外れた表紙が流氷のように流れ去っていくような感じ。

    ○春よりも春の隣の広さかな
    もう寒いのもいい加減嫌になってくる頃合い、春が待ち遠しいですね。
    立春から春といっても、そこから暖かくなるまでがまた長くて^^;

    ○着ぶくれて広東麺にたどり着く
    寒い時はアツアツ!がいいですよね。食べた後は、一枚じゃまになったりして。

    ○冬うらら道を広げて遅刻します
    雪の道を拡幅しながら? なんとものんきな雰囲気が楽しくて好き。とはいえ、雪国ではのんきどころじゃないんでしょうけどね。

    ○枯葉枯葉妻が敬語を使ひけり
    よろしいじゃございませんの。なにかご不満でも?
    という、皮肉な方面に読みました。(^^)

    ○英雄伝説氷柱いつぽん折れてをり
    一人逝去、ですね。戦死か暗殺か謀殺か。

    ○春近き雌雄異体でありにけり
    雌雄異体ってあまり聞きなれないので、ジョークみたいです。
    ヒトも動物、カラダのあちこちで春の訪れを感じ取るのでしょう。

    ○雪もよひ雌雄決する盤に座す
    将棋か囲碁か、はたまたチェスか。しかも相手が人間とは限らなかったりする。
    でも、「雪もよひ」だと人間と対面している方が似つかわしいかなぁ。

    ○コロッケの揚げたてなるを日脚伸ぶ
    はふはふ言いながら、食べ歩き。句全体がほっこりしています。

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  5. ○事務始め机広々してゐたり
    わかりますわかります。素直に読み切ったところがよいです。

    ○手を広げ倒れてみせる雪野原
    子供の頃同じことをやった記憶があります。実感。

    ○着ぶくれて広東麺にたどり着く
    いいところにたどり着いたと思います。

    ○挨拶の敬語やわらか餅を焼く
    やわらかい敬語とお餅、よろしいかと。

    ○敬虔なふりをしている冬桜 
    ではその実態とは? 気になります。

    ○枯葉枯葉妻が敬語を使ひけり
    何でしょう、一波乱ありそうな気配。

    ○ひと仕事終えて懐炉を取り出しぬ
    寒い場所でのお仕事だったんでしょうか。お疲れ様です。

    ○ぼたん雪ちちはは死んでから止まず
    胸の内に降り続く、幻の雪。

    ○牛撫づる小さきてのひら春浅し
    農家の子供でしょうか。かわいらしい景です。

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  6. ○広辞林の表紙外れてゐて流氷
    流氷がなんともいえないですね。

    ○事務始め机広々してゐたり
    気持ちよいです。w

    ○手を広げ倒れてみせる雪野原
    あるある感!

    ○春よりも春の隣の広さかな
    なんとなく納得。

    ○着ぶくれて広東麺にたどり着く
    広東麺とは、やられました。

    ○挨拶の敬語やわらか餅を焼く
    物腰も餅も柔らか。

    ○枯葉枯葉妻が敬語を使ひけり
    枯葉のリフレインにドラマがある。

    ○雪もよひ雌雄決する盤に座す
    将棋かな~、雪の天童。

    ○冬のビルが林檎ジュースに透けてゐる
    ついこの間私もこの景を見たような気がします。w

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  7. 春よりも春の隣の広さかな
     春の隣から、いくつもの道がはじまる。

    着ぶくれて広東麺にたどり着く
    旨そうな広東麺。

    冬うらら道を広げて遅刻します
    雪国の、生活の一コマ。冬うららがはずむ

    手をあげて冬帽の列渡りゆく
    カラフルな子どもの帽子が一列に、渡りゆく。

    人類に渡月橋あり日脚伸ぶ
     渡月橋があって、はじめて人類があるようだ。

    冬の橋渡る架空の家があり
    架空の家に、いい人がいるんだろう。

    枯葉枯葉妻が敬語を使ひけり
     後ろめたい夫には、いつも怖い妻がひかえている。

    雄蘂より雌蘂に似たる春の闇
    あやしい雌蕊、あやしい春の闇。

    ぼたん雪ちちはは死んでから止まず
    はかなく消えてゆく春の雪。ちちははの温もりが、融かすのか。

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  8. ○広辞林の表紙外れてゐて流氷
    流氷 。この言葉は広辞林にしか合わないですね。その感じが好きです。

    ○待春の広間に背広吊るされて
    吊るされている背広が生きています

    ○渡来人の末裔として着ぶくれる
    わざわざ渡来人の末裔だなんて言い訳しなくても、と笑ってしまいました。

    ○冬の橋渡る架空の家があり
    冬という季節が持つなんとも形容しがたい、超自然的な何かに敏感になってしまう、そういう雰囲気を感じました。

    ○挨拶の敬語やわらか餅を焼く
    共に餅をつつくような間柄で交わされる敬語ですね。

    ○北風は敬称略でかまわない
    醸し出している雰囲気が好きです。北風のチョイスがいい。

    ○ぼたん雪ちちはは死んでから止まず
    幻想的な世界が浮かびあがります。ぼたん雪という単語に心象風景らしさがありますよね。

    ○人気なき隣の駅に日脚伸ぶ
    人の多い駅から、隣りの駅の日を思う。その視点が綺麗だと思いました。

    ○冬のビルが林檎ジュースに透けてゐる
    やはり林檎ジュース、がいい。

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  9. 露結選

    ○広辞林の表紙外れてゐて流氷
    流氷の意外性。

    ○春よりも春の隣の広さかな
    期待感を含んだ広さなのでしょう。

    ○手をあげて冬帽の列渡りゆく
    おじいさんの列を想像しました。かわいい。

    ○渡来人の末裔として着ぶくれる
    そうなんですよね、われわれは。

    ○北風は敬称略でかまわない
    北風小僧の寒太郎様。

    ○英雄伝説氷柱いつぽん折れてをり
    折れた氷柱に物語が。

    ○雄蘂より雌蘂に似たる春の闇
    エロティックですね。

    ○幅広の運動靴やヒヤシンス
    子供の新しい靴でしょうか。

    ○零戦の小さきプロペラ雪催
    几帳面な人のきれいに整理整頓された部屋を思いました。ガラスケースに入った零戦の模型。

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