2013年6月4日火曜日

矢口真里句会・投句一覧

 お待たせしました。

【矢】
弓道はあれど矢の道なき蕃茄
弦は矢を離したがらず籐寝椅子
虎が雨矢面に立つさびしさよ
催促は矢より速けれ雲の峰
三ツ矢サイダー飲み干してまた遊ぶ
草矢飛べ吾が少年の日々にまで
朝の体操矢庭に蜥蜴死んでゐる
矢のごとく降り始めをり未草
矢印を辿りてゆけば草いきれ
矢面に立ちてひらくよアマリリス

【口】
くちなはの口開けてゐる午後三時
花紫蘇や青きトタンの勝手口
学校の蛇口盗難走り梅雨
減らず口はつきり解る木下闇
口紅のほくろに迫り夏料理
口髭や喋らぬままにソーダ水
香水の重く残りし非常口
糸口は緑雨のなかのロダン像
短夜の口内炎がまだ痛い
夕焼の蛇口に唇の近づきぬ

【真】
あれよあれよと真菌の育ちゆく
ソーダ水からだの真中抜けてゆく
まひまひを神父指さす真昼かな
らつきよ漬真価のごとく輝けり
心太鑑真像の襞めぐり
真つ青なひとところあり熱帯魚
真相を隠しバナナの叩き売り
大阪や八百九橋目の真夏
菱形が真偽を迫り明易し
魔術師の真顔に吸はれゆく夕焼

【里】
ふる里のパノラマ模型夏の月
ふる里を語らぬ父や麦の秋
駅が消え蛍が消えて里残る
横書きのとてもおほきな魚里のぼり
故里の土に汚れし水鉄砲
三里ほど遠回りする帰省かな
滴りや落人の里近づきぬ
巴里祭やバスは小雨をわけてゆき
理科室の椅子の重たし七変化
里心なんて知らない浮いてこい

【当季雑詠】
キャタピラも四点支持の杖も夏
サルトルが覗く厠の蟻地獄
気の重き薔薇の束ねてありにけり
蛍火の闇青ざめて来たりけり
焼き肉といふ儀式あり青簾
青葉して外野席より人埋まる
麦秋のノギスの小さき目盛かな
麦秋やアナログ写真持ち古りて
箱庭は褒めよドロップ舐めとほせ
無精ひげ剃り緑陰に涙せり
夕焼を傾けヴァイオリン弾けり
(以上)

10句選(特選、逆選なし)
選句締切:6月6日(木)24時(JST)
投稿先:恒信風句会
http://koshinfu.blogspot.com/

題に関わらず全体から10句選にてお願い致します。
整理の都合上、句の順番はそのままにして下さい。
投句一覧へのコメントとして、投稿して下さい。その際、名前/URLというのを選択して、俳号もしくはご本名を入力して下さい。URLは入れなくてよいです。
なお、右側にあった「最近のコメント」という欄は、ガジェットが壊れたらしく現在使えません。

ではよろしくお願い致します。

11 件のコメント:

  1. ○矢印を辿りてゆけば草いきれ
    葬儀場へは草叢を抜けなければ行けない。途中点。

    ○花紫蘇や青きトタンの勝手口
    田舎のどこにでもある家を象徴している。

    ○香水の重く残りし非常口
    深夜の忍び逢い。

    ○糸口は緑雨のなかのロダン像
    緑雨とロダン像の緑青色に共通する緑が、犯人を指し示している。

    ○真相を隠しバナナの叩き売り
    本当はただ同然で貰ったバナナなんです。

    ○ふる里を語らぬ父や麦の秋
    故郷はいい思い出ばかり。お前に聞かすのはもったいない。

    ○故里の土に汚れし水鉄砲
    少年の頃に遊んだ水鉄砲が、なぜか納屋の隅に転がっていた。

    ○三里ほど遠回りする帰省かな
    家に帰る前に、惚れてた隣村の同級生のA子に会っていこ。

    ○里心なんて知らない浮いてこい
    本当はある里心。強がりか照れ隠しか。

    ○気の重き薔薇の束ねてありにけり
    留守中に意にそわぬ男からの花束が玄関に。いい加減諦めてくれないかしら。

    返信削除
  2. 〇花紫蘇や青きトタンの勝手口
    あるあるな景色。

    〇学校の蛇口盗難走り梅雨
    運動場の蛇口はよく盗まれていました。

    〇香水の重く残りし非常口
    「重く」がいいですね。

    〇糸口は緑雨のなかのロダン像
    探偵ごっこ?

    〇夕焼の蛇口に唇の近づきぬ
    野球少年。

    〇心太鑑真像の襞めぐり
    不思議なことを言っています。

    〇真相を隠しバナナの叩き売り
    バナナの真相でしょうか。バナナ売りの真相でしょうか。

    〇魔術師の真顔に吸はれゆく夕焼
    夕焼を消してしまう?

    〇サルトルが覗く厠の蟻地獄
    むずかしそうな蟻地獄。

    〇青葉して外野席より人埋まる
    焼きそばとビールが欲しくなります。

    返信削除
  3. ○矢印を辿りてゆけば草いきれ
     どこにつながるでもない矢印を書いたものです。あれをたどった子もいただろうか。

    ○減らず口はつきり解る木下闇
     顔が見えづらい分小憎らしさも一倍でしょう。

    ○香水の重く残りし非常口
     重く、がうまい。自分はけして踏み込めない非日常的な事件を思います。

    ○夕焼けの蛇口に唇の近づきぬ
     扇情的でもあり。そこに注目してしまった作中主体の背徳感を思ったりします。

    ○らつきよ漬真価のごとく輝けり
     つやっつやですよ。泥まみれの俺ではないと。

    ○魔術師の真顔に吸はれゆく夕焼
     逆光の魔術師は子取りのようで恐ろしい。夏の夕べの悪夢です。

    ○駅が消え蛍が消えて里残る
     人の灯も虫の灯も消えて、寝静まった真夜中に里だけが横たわっている。里のおだやかな存在感。

    ○里心なんて知らない浮いてこい
     浮いてこい遊びをしている時点で、里を忘れているとは思えないのです。上京したてか。

    ○気の重き薔薇の束ねてありにけり
     薔薇は自分の方が気圧される花ですね。どう飾っても上手く扱えた気がしない。

    ○夕焼を傾けヴァイオリン弾けり
     ちと甘めですが、景が美しかったので。弾き手の陶酔が良くでている。

    返信削除
  4. ○矢印を辿りてゆけば草いきれ
    もわもわと大きな緑、そして夏の只中に迷わされていきそう

    ○花紫蘇や青きトタンの勝手口
    季語とトタンの「青」が絶妙。

    ○口紅のほくろに迫り夏料理
    色っぽい口元に涼しげな夏料理がよく合いますねえ。

    ○夕焼の蛇口に唇の近づきぬ
    限界まで体を酷使した部活動のあとの景が見える。

    ○魔術師の真顔に吸はれゆく夕焼
    たたみかけるマ音のリズムが季語に集約されて、
    恐ろしくも美しい世界。

    ○駅が消え蛍が消えて里残る
    ひとりごとのようにも思えて沁みます。

    ○巴里祭やバスは小雨をわけてゆき
    なんとも風情がよい。

    ○気の重き薔薇の束ねてありにけり
    気の重きなんておもしろいですねえ。薔薇の堂々とした
    鮮やかさをもてあます作者の心情もこれまた。

    ○焼き肉といふ儀式あり青簾
    焼き肉が儀式なんて初めてみました。妙な説得力があります。

    ○青葉して外野席より人埋まる
    これから始まるであろう試合への高まる期待が青葉から
    よく見えます。

    返信削除
  5. ○三ツ矢サイダー飲み干してまた遊ぶ
    単純明快で爽やか。

    ○矢面に立ちてひらくよアマリリス
    四方八方から命中しそう。

    ○花紫蘇や青きトタンの勝手口
    青ながらじめっとした雰囲気。

    ○香水の重く残りし非常口
    サスペンスドラマか。

    ○真つ青なひとところあり熱帯魚
    真つ白、真つ黄、真つ黒なひとところも。

    ○魔術師の真顔に吸はれゆく夕焼
    どんなマジックなんだろう?

    ○横書きのとてもおほきな魚里のぼり
    笑えました。横書き俳句ならでは。

    ○巴里祭やバスは小雨をわけてゆき
    「小雨けぶる夜の街に…」と唄うシャンソン。

    ○キャタピラも四点支持の杖も夏
    この並列はよく解らないけれど、かなりディープです。

    ○箱庭は褒めよドロップ舐めとほせ
    これまたディープで解らない並列ですが、OTとかSTの場面でしょうか。

    返信削除
  6. ●虎が雨矢面に立つさびしさよ
     千万人といえども吾往かん。

    ●花紫蘇や青きトタンの勝手口
     勝手口には紫蘇の花が。

    ●口紅のほくろに迫り夏料理
     ほくろが夏料理をひきたたせる。

    ●口髭や喋らぬままにソーダ水
     喋ると口髭が滑稽になる。

    ●ソーダ水からだの真中抜けてゆく
     ソーダ水は確かにこんな感じ。

    ●真つ青なひとところあり熱帯魚
     熱帯魚の神秘な色彩。

    ●ふる里のパノラマ模型夏の月
     ジオラマのこと? ジオラマになる故里は羨ましい。

    ●滴りや落人の里近づきぬ
     滴りが上手い。

    ●巴里祭やバスは小雨をわけてゆき
     巴里祭も殆ど死語になりましたね。

    ●麦秋やアナログ写真持ち古りて
     美しい緑に囲まれ、植物がこれから成長し始める時期に収穫を迎える麦。そんな季語が、持ち古してセピア色になった写真にきいている。

    返信削除
  7. ★三ツ矢サイダー飲み干してまた遊ぶ
     昭和の少年。

    ★ソーダ水からだの真中抜けてゆく
     爽快。

    ★らつきよ漬真価のごとく輝けり
     真価のごとくっておかしい。

    ★真相を隠しバナナの叩き売り
     全てを明らかにしてしまってはいけないのです。
     
    ★ふる里のパノラマ模型夏の月
     役場かな。

    ★理科室の椅子の重たし七変化
     確かに理科室の椅子って重かったな。

    ★気の重き薔薇の束ねてありにけり
     気が重い薔薇。真紅だな。
     
    ★焼き肉といふ儀式あり青簾
     庶民のご馳走。

    ★青葉して外野席より人埋まる
     外野席へダッシュ。

    ★夕焼を傾けヴァイオリン弾けり
     ヴァイオリニスト、確かに傾けてます。

    返信削除
  8. みなさま、帰省中、PC不所持プラス旅が多いため前回投句のみ失礼いたしました。
    ちょいとPC使えましたので今回せんくさせてください。

    >
    > ○草矢飛べ吾が少年の日々にまで
    > わかります。
    >


    > ○香水の重く残りし非常口
    > このホテルおととい泊まりました。



    >
    > ○ふる里のパノラマ模型夏の月
    > 長崎で見ました。



    > ○ふる里を語らぬ父や麦の秋
    > 男は黙っているのです。



    >
    > ○故里の土に汚れし水鉄砲
    > いいですねぇ。



    >
    > ○理科室の椅子の重たし七変化
    >
    > 雰囲気あります。



    >
    > ○気の重き薔薇の束ねてありにけり
    > これは薔薇しかありえませんね。



    > ○蛍火の闇青ざめて来たりけり
    > 桜についで蛍の闇も。



    >
    > ○青葉して外野席より人埋まる
    >
    ホームランの期待高まりますね。

    >
    > ○夕焼を傾けヴァイオリン弾けり
    > 美しい音色でしょう。

    返信削除
  9. ○矢印を辿りてゆけば草いきれ
     具体的な事物が省略され「草いきれ」が圧倒的に立ち上がっています。
     
    ○くちなはの口開けてゐる午後三時
     「くち」「口」のリフレインもいいけど、「午後三時」という委細構わぬ措辞がいいですね。

    ○香水の重く残りし非常口
     香水の香が遺留品なのですね。「重く」がよいです。

    ○ソーダ水からだの真中抜けてゆく
     抜けないでしょうと突っ込みたくなる「抜けてゆく」が眼目ですね。

    ○まひまひを神父指さす真昼かな
     叫んだり打ち落としたりはしないでしょう、神父なんだから。「真昼」がいいです。

    ○真つ青なひとところあり熱帯魚
     「ひとところあり」に七音も使うあたり、すばらし。

    ○理科室の椅子の重たし七変化
     おぼろげながらそんな椅子だったような。引っかかる危険を排し、背もたれも脚もない、四角い木の椅子。「七変化」はだめでしょう。

    ○焼き肉といふ儀式あり青簾
     中学生の隠語で「焼き肉」というのがあったりして…。

    ○青葉して外野席より人埋まる
     試合そっちのけでさわやかです。

    ○夕焼を傾けヴァイオリン弾けり
     「屋根の上のヴァイオリン弾き」でしょうか。「傾け」がいいですね。
     
    (以上)

    返信削除
  10. ○弦は矢を離したがらず籐寝椅子
    籐寝椅子の取り合わせが良いですね。

    ○香水の重く残りし非常口
    意味深です。

    ○夕焼の蛇口に唇の近づきぬ
    映像が美しい。

    ○ソーダ水からだの真中抜けてゆく
    シュワ~ッと抜けてゆきますね。

    ○らつきよ漬真価のごとく輝けり
    ぴかぴかのらっきょう美味しそう。w

    ○駅が消え蛍が消えて里残る
    変わりゆくものと残るものと。

    ○巴里祭やバスは小雨をわけてゆき
    良い雰囲気を買います。

    ○気の重き薔薇の束ねてありにけり
    薔薇だからこそ、ですね。

    ○焼き肉といふ儀式あり青簾
    焼肉のあの形を儀式とは、面白い。

    ○夕焼を傾けヴァイオリン弾けり
    夕焼を傾けとは上手いですね。

    返信削除
  11. ○虎が雨矢面に立つさびしさよ
    季語が渋く決まってます。

    ○矢印を辿りてゆけば草いきれ
    いつの間にか深い草原へ。

    ○花紫蘇や青きトタンの勝手口
    いかにも勝手口らしい景。花紫蘇がきれいです。

    ○糸口は緑雨のなかのロダン像
    何か発見した様子。

    ○真つ青なひとところあり熱帯魚
    いかにも熱帯魚らしいカラフルさ。

    ○ふる里を語らぬ父や麦の秋
    何か訳があるのでしょう。麦の秋が手がかりか。

    ○三里ほど遠回りする帰省かな
    キロメートルで書いては出てこない風情。

    ○焼き肉といふ儀式あり青簾
    あれは儀式なのですね。戦場だと思ってました。

    ○青葉して外野席より人埋まる
    季語が微妙ですが、俳句らしい把握。

    ○麦秋やアナログ写真持ち古りて
    「アナログ」と断らないといけなくなった昨今。いかにも古びていそう。

    返信削除