2013年6月30日日曜日

世界遺産句会・投句一覧

お待たせしました。

【世】
ひまはりや彼の世はことのほか白き
蟻地獄理知が勝ちたる世の底に
逆光の神輿この世へ戻りたる
軽鳧の子の出世頭のゐるごとく
世に鎌を掛け蟷螂の生まれたり
世知辛く押し出されたる心太
走馬灯あの世この世を往き来せり
仏法僧世渡りの下手の遺伝せし
片蔭の世田谷通り恋始まる
夕焼のよく浸みてゐる世田谷区
幼子の世界まるごと夕焼くる
隣から尾崎紀世彦グラジオラス

【界】
あぢさゐの視界に消ゆる野球帽
さみだれて界隈淡く青帯びぬ
サングラス外して越ゆる境界線
炎昼や世界の果てを行く列車
夏の夜の世界の歪む世界地図
界隈とは実梅の落ちてゐるところ
界隈に居酒屋多し夏の月
界隈の猫に新顔月見草
蛍の夜結界超えて夫を訪ふ
限界を超えて泰山木の花
熱帯夜緩む界面活性剤
梅雨闇の鏡世界にをんな立つ
鴉は山に三千世界の大昼寝

【遺】
遺してはくれぬか蟻の塔図面
遺言のごとく佇む夏館
遺言のはじめにサングラスのこと
遺言の一つとなりし揚羽蝶
遺言書諾ふやうな扇風機
遺失物引取に行く梅雨の闇
遺精なほ老年にあり昼寝覚
遺体しばらくほうつておけば蠅がくる
靴下あと残る素足の遺憾なり
三伏の遺書の書き方講座かな
水着干されあり遺失物センター
白靴のひとと遺跡を巡りをり

【産】
Z旗のごとく産着の南風に乗る
サイダーの泡の産まれしファンファーレ
夏暁や産業道路未だ静か
産院の廊下のやうな梅雨晴間
産声の響く廊下や明易し
産土に風の生まるる晩夏かな
産道の深し緑陰抜けてくる
産道を出てしばらくの梅雨湿り
浅草やサンバ繰り出す産婆連
日本産アリ類画像データベース
万緑に水の産まるる処かな
老鶯の声の生産まだかまだか

【当季雑詠】
こあぢさゐトンネルの闇濡れてゐる
さざれ石真白きままに夏終る
ざりがにを釣る刻々も双子かな
シャーベット爽やかに濃し伯爵邸
スマートフォン時々汗を気にしつつ
一見の店に鮨食ふカウンター
夏痩せといふものに憧れてゐる
蛍狩蕎麦打プラスサプライズ
紫陽花の褪せ加減でも見に行くか
猫の来るスペース残し籐椅子に
白南風の飛行機雲に「生きよかし」
白南風やアラブの国の続き文字
白壁を真つ直ぐつたふ蝸牛
被災者に夏帽を脱ぐ陛下かな

(以上)

12句選(特選、逆選なし)
選句締切:7月2日(火)24時(JST)
投稿先:恒信風句会
http://koshinfu.blogspot.com/

題に関わらず全体から12句選にてお願い致します。
整理の都合上、句の順番はそのままにして下さい。
投句一覧へのコメントとして、投稿して下さい。その際、名前/URLというのを選択して、俳号もしくはご本名を入力して下さい。URLは入れなくてよいです。
なお、右側にあった「最近のコメント」という欄は、ガジェットが壊れたらしく現在使えません。

ではよろしくお願い致します。

12 件のコメント:

  1. ★逆光の神輿この世へ戻りたる
     黄泉への道を進んでいた神輿。

    ★世知辛く押し出されたる心太
     心太も災難だ。

    ★片蔭の世田谷通り恋始まる
     青山通りじゃなくてね。妙なリアリティ。

    ★あぢさゐの視界に消ゆる野球帽
     梅雨時でも元気な下町っ子。

    ★界隈に居酒屋多し夏の月
     飲兵衛横丁。

    ★遺言のごとく佇む夏館
     相続権は誰が。

    ★白靴のひとと遺跡を巡りをり
     なんだか元気が出るな。

    ★サイダーの泡の産まれしファンファーレ
     サイダー冥利。

    ★産院の廊下のやうな梅雨晴間
     赤ちゃんの泣く声で充満してる感じかな。

    ★こあぢさゐトンネルの闇濡れてゐる
     闇が濡れてるって、若干類想的だけど、やっぱり詩的。

    ★ざりがにを釣る刻々も双子かな
     双子もライバル。

    ★シャーベット爽やかに濃し伯爵邸
     濃厚果汁を伯爵はお好みなのです。

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  2. トオイダイスケ2013年6月30日 15:23

    ○夕焼のよく浸みてゐる世田谷区
     私個人としては「世田谷区」が実感できました。
    ○幼子の世界まるごと夕焼くる
     「世界まるごと」という言葉が句になったのがうれしいです。
    ○隣から尾崎紀世彦グラジオラス
     グラジオラスが似合う。
    ○界隈とは実梅の落ちてゐるところ
     小さな町の一角を想像できる。
    ○界隈の猫に新顔月見草
     夜の帰り道に見つけたのでしょうか。
    ○遺言のごとく佇む夏館
     夏が好きだった先代。
    ○白靴のひとと遺跡を巡りをり
     人の印象を履いている靴で覚えることがある。キース・ジャレットもいつかのコンサートで白靴を履いていた。
    ○産院の廊下のやうな梅雨晴間
     匂いと湿度となまめかしさ。
    ○万緑に水の産まるる処かな
     美しく涼やかな水源。
    ○こあぢさゐトンネルの闇濡れてゐる
     トンネルの中は少し怖いが涼しさも感じる。二つの「ゐ」が楽しい。
    ○さざれ石真白きままに夏終る
     夏の短さと宇宙のなかで自分の生きる時間の小ささを感じる。
    ○ざりがにを釣る刻々も双子かな
     釣られたざりがにまで双子に見えてくる。

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  3. ○片蔭の世田谷通り恋始まる
    少しずつ近づく距離がくすぐったい。

    ○幼子の世界まるごと夕焼くる
    確かにそうでした。最初で最後と思わせる永遠に近い赤の中で。

    ○あぢさゐの視界に消ゆる野球帽
    小さな頭が見え隠れしている様が伺えます。

    ○界隈に居酒屋多し夏の月
    店の外まで台を出して、飲んでいるのかな。

    ○限界を超えて泰山木の花
    泰山木からしずかに何かを超えていく絵がみえます。

    ○梅雨闇の鏡世界にをんな立つ
    鏡の中まで深い闇があり、その中の女には情念がある。

    ○水着干されあり遺失物センター
    スクール水着の気がする。

    ○白靴のひとと遺跡を巡りをり
    様々な角度から歴史を見て回るのですね。

    ○夏暁や産業道路未だ静か
    ふつふつと暑くなる夏の一日がまたはじまるのです。

    ○万緑に水の産まるる処かな
    しずかに深く秘密のように。

    ○シャーベット爽やかに濃し伯爵邸
    シャーベットと伯爵邸の取り合わせがいい。

    ○白南風やアラブの国の続き文字
    季語がアラビア文字の流れとあっています。

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  4. ●ひまはりや彼の世はことのほか白き
     ひまわりと白い彼の世のとりあわせがいい。

    ●逆光の神輿この世へ戻りたる
     彼の世からの帰還。

    ●世知辛く押し出されたる心太
     確かに世知辛く感じられる。

    ●夕焼のよく浸みてゐる世田谷区
     世田谷区だけではないけれど。

    ●幼子の世界まるごと夕焼くる
     昔そんな感じもした。

    ●さみだれて界隈淡く青帯びぬ
     青を感じる感性がいい。

    ●鴉は山に三千世界の大昼寝
     良く分からないが、感じは分かる。

    ●遺失物引取に行く梅雨の闇
     あって良かったとも思うが。

    ●遺体しばらくほうつておけば蠅がくる
     上5の思い切った字余りが効いている。

    ●サイダーの泡の産まれしファンファーレ
     ファンファーレで頂き。

    ●夏暁や産業道路未だ静か
     これから混雑が始まる。

    ●スマートフォン時々汗を気にしつつ
     汗が付くとタッチが滑る。

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  5. ○逆光の神輿この世へ戻りたる
    神輿の乱舞するさまが見えます。

    ○蛍の夜結界超えて夫を訪ふ
    身につまされる。

    ○限界を超えて泰山木の花
    泰山木も大きくなり過ぎると。

    ○梅雨闇の鏡世界にをんな立つ
    ぞくぞくとする美人、いや怖い。

    ○遺言のごとく佇む夏館
    主無き夏館。さてその始末は。

    ○遺言のはじめにサングラスのこと
    ご先祖さまから受け継がれたサングラスか?

    ○三伏の遺書の書き方講座かな
    遺書を書くような身分になってみたい。

    ○白靴のひとと遺跡を巡りをり
    白靴はガイドなんでしょうね。

    ○産土に風の生まるる晩夏かな
    神社の風の涼しさよ。

    ○産道の深し緑陰抜けてくる
    産道が緑陰だったとは!

    ○万緑に水の産まるる処かな
    木々も水がなければ始まらぬ。

    ○こあぢさゐトンネルの闇濡れてゐる
    こあぢさゐがトンネルの環境をよく表している。

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  6. 〇逆光の神輿この世へ戻りたる
    あの世この世を行ったり来たり。

    〇世知辛く押し出されたる心太
    世知辛いのは世の常ですな。

    〇仏法僧世渡りの下手の遺伝せし
    世渡り下手というよりは悟りの境地。

    〇夕焼のよく浸みてゐる世田谷区
    世田谷区以外でも可能かどうか。

    〇あぢさゐの視界に消ゆる野球帽
    「あぢさゐの視界」がよい。ちょっぴりファンタジック。

    〇サングラス外して越ゆる境界線
    サングラスを外す瞬間の一瞬の真っ白な視界。

    〇梅雨闇の鏡世界にをんな立つ
    「鏡世界」という異界。

    〇遺言のごとく佇む夏館
    強烈な直喩。

    〇水着干されあり遺失物センター
    水着の持ち主は誰?。

    〇サイダーの泡の産まれしファンファーレ
    パンパカパーン!!

    〇産院の廊下のやうな梅雨晴間
    ああ、絶妙ですね。

    〇シャーベット爽やかに濃し伯爵邸
    伯爵邸に招かれた微妙な緊張感。

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  7. ○軽鳧の子の出世頭のゐるごとく
    オフィス街の軽鳧なれば。

    ○片蔭の世田谷通り恋始まる
    松沢交番あたり、あるいはSAIGONあたり。

    ○夕焼のよく浸みてゐる世田谷区
    住人としては採らざるを得ません。

    ○蛍の夜結界超えて夫を訪ふ
    出家しちゃったのか。

    ○遺言のはじめにサングラスのこと
    謎めいています。

    ○遺言書諾ふやうな扇風機
    いやいやするのではなく上下に振っている? 諾っているのは扇風機だけという状況。

    ○遺体しばらくほうつておけば蠅がくる
    身も蓋もない。

    ○靴下あと残る素足の遺憾なり
    よ~くわかります。

    ○夏暁や産業道路未だ静か
    正調です。

    ○産道の深し緑陰抜けてくる
    「緑陰」が効いています。

    ○シャーベット爽やかに濃し伯爵邸
    素敵な雰囲気。「爽やかに濃し」に納得。

    ○紫陽花の褪せ加減でも見に行くか
    俳人の極意か。

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  8. ○夕焼のよく浸みてゐる世田谷区
    世田谷は広いので印象的には散漫ですが
    ほどよい甘さにひかれました。

    ○隣から尾崎紀世彦グラジオラス
    はっきりした花と朗々とした歌声が可笑しい。

    ○あぢさゐの視界に消ゆる野球帽
    ノスタルジックですね。

    ○界隈とは実梅の落ちてゐるところ
    実梅がいいなぁと思いました。

    ○界隈に居酒屋多し夏の月
    そんな感じのところに住んでいたこともあります。

    ○遺言のごとく佇む夏館
    夏館の存在感が伝わってきます。

    ○遺言のはじめにサングラスのこと
    その後も色々書いてありそう。

    ○遺体しばらくほうつておけば蠅がくる
    それはそうでしょうが・・。

    ○産院の廊下のやうな梅雨晴間
    梅雨晴れ間なのかなぁと悩みながら捨てがたいです。

    ○こあぢさゐトンネルの闇濡れてゐる
    闇が濡れているという句はあるかもしれませんが
    コアジサイがいいと思いました。

    ○シャーベット爽やかに濃し伯爵邸
    爽やかに濃し、やや強引ですが納得。

    ○紫陽花の褪せ加減でも見に行くか
    目的は別のところにあるのでしょう。

    返信削除
  9. ○世知辛く押し出されたる心太
    心太の心情がわかります。

    ○夕焼のよく浸みてゐる世田谷区
    一晩漬け込みました。

    ○幼子の世界まるごと夕焼くる
    幼子から夕焼けの広大さを感じます。

    ○あぢさゐの視界に消ゆる野球帽
    野球帽の丸さとあぢさいの対比がいいです。

    ○さみだれて界隈淡く青帯びぬ
    青が見えます。

    ○界隈の猫に新顔月見草
    猫好きにはうれしい発見。

    ○靴下あと残る素足の遺憾なり
    しかも痒くなります。

    ○水着干されあり遺失物センター
    実は男物とか。

    ○産声の響く廊下や明易し
    産声のインパクト。

    ○産土に風の生まるる晩夏かな
    遥かな故郷。

    ○さざれ石真白きままに夏終る
    短き夏を感じます。

    ○紫陽花の褪せ加減でも見に行くか
    散りゆく紫陽花の悲哀。

    返信削除
  10. ○ひまはりや彼の世はことのほか白き
    「彼の世」への憧れのようなものを感じます。季語が意味深。

    ○逆光の神輿この世へ戻りたる
    神様を送り届けた神輿、後光が差してます。

    ○世知辛く押し出されたる心太
    心太やっていくのも大変らしいです。

    ○隣から尾崎紀世彦グラジオラス
    これは驚きますね。グラジオラスが妙に動かない。

    ○炎昼や世界の果てを行く列車
    世界の果てには何があるのか。炎昼の中、想像を巡らせます。

    ○遺してはくれぬか蟻の塔図面
    何やら妙なものを要求しています。

    ○遺言のはじめにサングラスのこと
    きっと由緒あるサングラスなのでしょう。

    ○靴下あと残る素足の遺憾なり
    足首だけ細くなっているあの状態、まことに遺憾。

    ○三伏の遺書の書き方講座かな
    熱中症で倒れても困らないように。

    ○こあぢさゐトンネルの闇濡れてゐる
    しっとり感がいい感じです。

    ○ざりがにを釣る刻々も双子かな
    いつでも一緒、仲良しな様子が微笑ましいです。

    ○猫の来るスペース残し籐椅子に
    飼い主のちょっとした気遣い。

    返信削除

  11. ○逆光の神輿この世へ戻りたる
    視覚的演出が良いですね。

    ○世知辛く押し出されたる心太
    とほほな感じがよく出ています。w

    ○夕焼のよく浸みてゐる世田谷区
    ほんと、よく浸みていそう。

    ○限界を超えて泰山木の花
    泰山木の花にやられました。

    ○水着干されあり遺失物センター
    う~ん、取り合せが巧み。

    ○白靴のひとと遺跡を巡りをり
    太陽の光が眩しい。

    ○産院の廊下のやうな梅雨晴間
    しっとりと明るくて。

    ○産声の響く廊下や明易し
    明るく響きますね。

    ○こあぢさゐトンネルの闇濡れてゐる
    雰囲気が良いです。

    ○シャーベット爽やかに濃し伯爵邸
    避暑地の夏休み。

    ○スマートフォン時々汗を気にしつつ
    それでも手放せません。

    ○紫陽花の褪せ加減でも見に行くか
    俳人魂!

    返信削除
  12. 遅くなってすみません。

    ○ひまはりや彼の世はことのほか白き
     炎天に咲く花のいくつかは、ほんとうにあの世につながっているような気がします。「ひまはり」に「ことのほか白き」を配したところが眼目でしょう。
     
    ○逆光の神輿この世へ戻りたる
     連体形「たる」でいいのか悩ましくもあるのですが、祭が神事であることを思い出させてくれる句です。

    ○世に鎌を掛け蟷螂の生まれたり
     こういう言葉の遊びは好きです。

    ○片蔭の世田谷通り恋始まる
     馬事公苑でデートですね。

    ○限界を超えて泰山木の花
     なんの限界なんだか実はよく分からないのですが、あの古代植物のような分厚い花が効いています。

    ○遺体しばらくほうつておけば蠅がくる
     徹底的にリアリズムで詠むというわけでもなく、投げやりな理屈が妙に可笑しいです。

    ○水着干されあり遺失物センター
     推敲の余地はあるような気がしますが、これは面白いです。

    ○白靴のひとと遺跡を巡りをり
     わけありな逢い引きのためにめかして来たんだから、そんなとこ詠まなくたっていいじゃないかぁ、と、当事者のように反応してしまいます。

    ○産道の深し緑陰抜けてくる
     緑の黒髪ならぬ緑陰って、その陰なのでしょうか。じわじわと可笑しいです。

    ○産道を出てしばらくの梅雨湿り
     そんなことを考えていたのか。

    ○紫陽花の褪せ加減でも見に行くか
     紫陽花ってときどき咲きながらにしてドライフラワーみたいなの、ありますよね。スレンダー美女感横溢です。

    ○猫の来るスペース残し籐椅子に
     猫って籐椅子が大好きなのでしょ? この句の場合、人間はどうやって座っているのでしょう?

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