2013年6月23日日曜日

蚊帳吊草句会・投句一覧

お待たせしました。

【蚊】
蚊にすこし宿酔の血をわけてやる
蚊を打てば泡の飛び散る厨かな
蚊喰鳥雲の重たくなつてきし
蚊蜻蛉の運ぶ荷物の遅延せり
筋骨の隆々と蚊の来てゐたり
血圧を気にする歳の蚊遣かな
手心を加へ藪蚊を打つ少女
声あればきつと野太き声の蚊よ
道場の傍らに置く蚊遣香
日盛りも闇もきらはず飛蚊症
藪蚊叩くAB型に相違なし

【帳】
スタンプあまたあり帰省子の自由帳
夏の夜の帳が下りて銀座かな
夏の夜の帳が包む矯正院
簡単な帳面どほり夾竹桃
句帳幾冊まつさらなままに紙魚
帳面の日付飛び飛び百日紅
噴水や少女の捲る単語帳
文字跳ねしシステム手帳アイスティー
几帳面な性格蟻の列糺す
蝙蝠の開き手帳となりにけり
蝙蝠の行き交ふ帳下ろしけり

【吊】
てるてる坊主梅雨の重さに吊られあり
円安のどこまで行くや吊忍
汗いちまい隔て鞄と吊革と
吊り出しで麒麟児の勝ち花南瓜
吊るされし操り人形夏の月
吊革をきらめかせたる夏日かな
廃屋に高く吊るせよ金魚玉
風鈴を吊つて一級建築士
風鈴を吊れば幼きころのこと
夕闇に吊されてゐる夏袴
落ちさうで落ちぬ黒蔕吊りバナナ

【草】
夏の星草野仁は出題す
客ひとりマスターひとり月見草
祝詞では鎮められない夏の草
蝉時雨草加煎餅の憂鬱
扇風機草臥れるまで首振つて
草いきれ既視感強くなりにけり
草刈や影残さるる庭の端
日日草駅前駐輪有料に
百日草生家無住に朽ちゆくも
風呂敷の唐草模様夏盛ん
密会に傘密葬に袈裟草いきれ
旅人の疲れてゐたり夏の草

【当季雑詠】
カーソルをひとつ左に梅雨の月
夏空を踏み壊すほどデモ隊は
間諜の帰郷する夢水無月は
胸板の厚き薄きやサングラス
五分おきの目薬三種さみだるる
荒南風が街に八百屋の香を散らす
十薬の祈り風力発電所
長袖で立つ網戸なき厨かな
白扇や僧が隣に岐阜羽島
埋立の海へ広がる草いきれ
夕立のあとコーヒー店よりひとりふたり
夕立後グランドピアノの開かるる

(以上)

11句選(特選、逆選なし)
選句締切:6月25日(火)24時(JST)
投稿先:恒信風句会
http://koshinfu.blogspot.com/

題に関わらず全体から11句選にてお願い致します。
整理の都合上、句の順番はそのままにして下さい。
投句一覧へのコメントとして、投稿して下さい。その際、名前/URLというのを選択して、俳号もしくはご本名を入力して下さい。URLは入れなくてよいです。
なお、右側にあった「最近のコメント」という欄は、ガジェットが壊れたらしく現在使えません。

ではよろしくお願い致します。

11 件のコメント:

  1. ★蚊喰鳥雲の重たくなつてきし
     この感覚はよく解る。

    ★声あればきつと野太き声の蚊よ
     羽音との対比。

    ★道場の傍らに置く蚊遣香
     「道場」なんとも絶妙。

    ★スタンプあまたあり帰省子の自由帳
     懐かしく健全な郷愁。

    ★吊るされし操り人形夏の月
     俳句形式のよろしさ。

    ★廃屋に高く吊るせよ金魚玉
     餌は誰がやりに来るのだろう。

    ★客ひとりマスターひとり月見草
     これ一見の店だったら耐えられないかも。

    ★扇風機草臥れるまで首振つて
     扇風機、健気や。

    ★草いきれ既視感強くなりにけり
     草いきれの本意かも。

    ★白扇や僧が隣に岐阜羽島
     降りていかないのかな。

    ★夕立後グランドピアノの開かるる
     どんな曲を弾くのか想像が広がる

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  2. ○道場の傍らに置く蚊遣香
    道場に響く練習の音が聞こえます。

    ○藪蚊叩くAB型に相違なし
    AB型というところに、妙に信憑性があります。

    ○夏の夜の帳が下りて銀座かな
    華やぐ銀座へ繰り出したくなる。

    ○噴水や少女の捲る単語帳
    夏期講習の合間でしょうか。

    ○てるてる坊主梅雨の重さに吊られあり
    梅雨の重さとてるてる坊主の明るさの対比がよい。

    ○風鈴を吊れば幼きころのこと
    音の響きにさまざまに思い出すことがありそう。

    ○夏の星草野仁は出題す
    ひとしくん人形を賭けて!

    ○扇風機草臥れるまで首振つて
    いつもありがとう。

    ○旅人の疲れてゐたり夏の草
    夏の草に寝転がって、青い空に癒されているのでしょうか。

    ○カーソルをひとつ左に梅雨の月
    光る画面の情報がもたらす世界と、外の世界の光。

    ○埋立の海へ広がる草いきれ
    中途半端な空間にやってきている夏。

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  3. ○蚊を打てば泡の飛び散る厨かな
    血が飛び散らないで洗剤の泡が飛び散るところが秀逸。

    ○手心を加へ藪蚊を打つ少女
    手心を加えても蚊は死ぬのにナンセンス。

    ○道場の傍らに置く蚊遣香
    若者の汗の臭いと蚊遣香の香りの対比。

    ○句帳幾冊まつさらなままに紙魚
    まっさらで紙魚というのがおかしい。昭和三十年代の句帳か?

    ○てるてる坊主梅雨の重さに吊られあり
    梅雨の重さ、の措辞がいい。

    ○廃屋に高く吊るせよ金魚玉
    無意味なところが面白い。

    ○風鈴を吊つて一級建築士
    外し加減がよい。

    ○客ひとりマスターひとり月見草
    マスターに恋心を抱く女?

    ○蝉時雨草加煎餅の憂鬱
    蝉時雨も草加煎餅もやかましい。

    ○五分おきの目薬三種さみだるる
    これは難儀なことで。点眼液とさみだれの大小の対比。

    ○埋立の海へ広がる草いきれ
    埋め立てて耕作地にするはずだった海もやがては草ぼうぼうに。

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  4. トオイダイスケ2013年6月24日 1:02

    はじめまして。初参加させていただきます、トオイダイスケと申します。よろしくお願いいたします。

    ○手心を加へ藪蚊を打つ少女
    生殺しそのものという感じがよく出ていると思います。

    ○帳面の日付飛び飛び百日紅
    ノートの使われ方そのものという感。百日紅はやや付き過ぎかな、という気もほんの少しだけしました。

    ○てるてる坊主梅雨の重さに吊られあり
    雨をたっぷり含んで存在感を哀しくも増している様子が見えます。

    ○風鈴を吊つて一級建築士
    家を造って一番したかったことはもしやそれだったのか、という面白さ。

    ○夕闇に吊されてゐる夏袴
    シンプルできれいな情景。

    ○扇風機草臥れるまで首振つて
    涼しく静かな部屋のなかで、シリアスで激しい話に何度も大きく首を縦や横に振る人。

    ○百日草生家無住に朽ちゆくも
    百日草と中七下五が近い気がするが、これはそれが良いのかなとも思います。

    ○風呂敷の唐草模様夏盛ん
    これもシンプルできれいな情景。

    ○胸板の厚き薄きやサングラス
    夏っぽいエロティックな視点。

    ○五分おきの目薬三種さみだるる
    目薬が何滴も何種類も混ざるのが、五月雨的ないろいろな風味をはらんだ空気の感じを表している。「さみだるる」を漢字にしないのが良いです。

    ○夕立後グランドピアノの開かるる
    「開かれること」の気持ちよさ、始まる感じが出ている。個人的には上五は「夕立(ゆだち)止み」、中八の末尾の「の」は無い方が好きです。

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  5. ○蚊にすこし宿酔の血をわけてやる
    血中アルコール濃度が高いと蚊も酔う?

    ○蚊を打てば泡の飛び散る厨かな
    臨場感満点。

    ○帳面の日付飛び飛び百日紅
    たまにしか書かない日記?

    ○噴水や少女の捲る単語帳
    カレシを待っている間も。

    ○几帳面な性格蟻の列糺す
    なにごともきちんとしたいので。

    ○吊り出しで麒麟児の勝ち花南瓜
    意外な視点から。

    ○廃屋に高く吊るせよ金魚玉
    どうするというのだろう?

    ○風鈴を吊つて一級建築士
    自宅が事務所の工務店だろう。

    ○夕闇に吊されてゐる夏袴
    禰宜の袴か、剣道弓道の袴か。折り目が崩れないように。

    ○旅人の疲れてゐたり夏の草
    炎天下を歩き疲れて草枕。

    ○夕立後グランドピアノの開かるる
    夕立後のくわっとぎらつく日差しとグランドピアノの金色が照応する。

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  6. 〇蚊を打てば泡の飛び散る厨かな
    主婦の視線。

    〇蚊喰鳥雲の重たくなつてきし
    もうすぐ雨ですよ。

    〇筋骨の隆々と蚊の来てゐたり
    筋骨隆々は人か蚊か。

    〇日盛りも闇もきらはず飛蚊症
    うっとおしいでしょうね。

    〇帳面の日付飛び飛び百日紅
    とびとびのひとならび?

    〇円安のどこまで行くや吊忍
    もうどうにでもなれ、ですね。

    〇吊り出しで麒麟児の勝ち花南瓜
    麒麟児、なつかしい。

    〇風鈴を吊つて一級建築士
    風鈴を吊るまでが建築士の仕事。

    〇夕闇に吊されてゐる夏袴
    神事が終わった?

    〇五分おきの目薬三種さみだるる
    目の中がさみだれ。

    〇カーソルをひとつ左に梅雨の月
    画面の中に月があらわれる。

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  7. ●筋骨の隆々と蚊の来てゐたり
     こんな感じの蚊、本当にゐますね。

    ●噴水や少女の捲る単語帳
     噴水の前で待ち合わせ。その間にちょっと単語をチェック。

    ●吊るされし操り人形夏の月
     どこかの夜店の風景。

    ●吊革をきらめかせたる夏日かな
     車窓から入る夏の日。目の付けどころに感心。

    ●風鈴を吊つて一級建築士
     一級建築士らしい手ぶりも浮かんで来ます。

    ●草刈や影残さるる庭の端
     隅の草もよく刈りましょう。

    ●風呂敷の唐草模様夏盛ん
     唐草模様はどこか暑苦しい。

    ●カーソルをひとつ左に梅雨の月
     窓辺の月がPCを覗いている。

    ●荒南風が街に八百屋の香を散らす
     「香を散らす」で頂きました。

    ●白扇や僧が隣に岐阜羽島
     白扇で大野伴睦を思い出す。

    ●埋立の海へ広がる草いきれ
     埋立地の様子がありありと目に浮かびます。

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  8. ○蚊喰鳥雲の重たくなつてきし
    雲の重たい感じ、共感度大です。

    ○日盛りも闇もきらはず飛蚊症
    日盛りと闇の対比に飛蚊症の意外性。

    ○夏の夜の帳が下りて銀座かな
    銀座の街の夜の顔が見えてきます。

    ○文字跳ねしシステム手帳アイスティー
    手書きの手帳は手放せません。

    ○蝙蝠の行き交ふ帳下ろしけり
    うちの近所でも見かけます。w

    ○てるてる坊主梅雨の重さに吊られあり
    梅雨の重さにドラマが。

    ○風鈴を吊つて一級建築士
    いい仕事してます。

    ○夕闇に吊されてゐる夏袴
    夕闇に詩情があります。

    ○客ひとりマスターひとり月見草
    カウンター越しに過ぎる静かな時間。

    ○埋立の海へ広がる草いきれ
    夏の空き地はすぐに草ぼうぼうになりますね。

    ○夕立後グランドピアノの開かるる
    今宵はどんな曲が奏でられるのでしょう。

    返信削除
  9. ○蚊にすこし宿酔の血をわけてやる
     「やる」がとても効いていますね。

    ○筋骨の隆々と蚊の来てゐたり
     筋肉を締めると蚊の針が抜けなくなり、しかる後におもむろに打つのですね。

    ○藪蚊叩くAB型に相違なし
     性格が悪いのですね。

    ○句帳幾冊まつさらなままに紙魚
     まつさらだと紙魚、目立ちますよね。

    ○風鈴を吊つて一級建築士
     ものすごくこだわりがありそうです。

    ○客ひとりマスターひとり月見草
     どちらかが狐だと思います。

    ○胸板の厚き薄きやサングラス
     両方ともサングラスなんだけど、おのずから力関係が分かる感じがします。

    ○五分おきの目薬三種さみだるる
     常在菌によって何かの拍子に炎症を起こしてしまったのですね。あれ、ほんとに三種混合か何かにならないんでしょうか。「さみだるる」が涙をも想起させてよいです。

    ○荒南風が街に八百屋の香を散らす
     湿った野菜屑が見えるようです。

    (選外)白扇や僧が隣に岐阜羽島
    「炎天より僧ひとり乗り岐阜羽島 森澄雄」に対し、オマージュにもパロディにもなっていないような気がします。

    ○埋立の海へ広がる草いきれ
     セイタカアワダチソウとか生えていそうです。「埋立の海へ広がる」の語順の危うさがいいです。

    ○夕立後グランドピアノの開かるる
     曲は「ステラ・バイ・スターライト」ですね。

    返信削除
  10. はじめまして。初投句のけんじです。
    よろしくお願いいたします。

    ○蚊にすこし宿酔の血をわけてやる
    酔い冷ましにいいかも。

    ○道場の傍らに置く蚊遣香
    情緒を感じます。

    ○スタンプあまたあり帰省子の自由帳
    子供はスタンプ大好き。

    ○句帳幾冊まつさらなままに紙魚
    句帳がもったいなくて使えません。

    ○噴水や少女の捲る単語帳
    期末テストですかね。

    ○几帳面な性格蟻の列糺す
    指先が見えます。


    ○風鈴を吊つて一級建築士
    一級の証。

    ○風鈴を吊れば幼きころのこと
    実家にも風鈴ありました。

    ○落ちさうで落ちぬ黒蔕吊りバナナ
    蔕は結構固いです。

    ○客ひとりマスターひとり月見草
    ハードボイルド。

    ○扇風機草臥れるまで首振つて
    誰か止めてあげてください。

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  11. 遅くなりました。

    ○道場の傍らに置く蚊遣香
    日本の夏の風情。電子式とは行きますまい。

    ○スタンプあまたあり帰省子の自由帳
    夏の思い出がたくさん。

    ○帳面の日付飛び飛び百日紅
    私のノートもそんな感じです。百日紅が謎ですが。

    ○几帳面な性格蟻の列糺す
    蟻からしてみたら余計なお世話?

    ○てるてる坊主梅雨の重さに吊られあり
    「梅雨の重さ」で頂きました。

    ○吊るされし操り人形夏の月
    真夜中になったら踊り出しそうな雰囲気。

    ○扇風機草臥れるまで首振つて
    草で「草臥れる」を思いついた発想に一票。

    ○草いきれ既視感強くなりにけり
    どこかで感じたことのある匂い。謎めいています。

    ○草刈や影残さるる庭の端
    何の影でしょう。ポツンと取り残された感じ。

    ○五分おきの目薬三種さみだるる
    種類が多いと大変なんですよね。目薬でさみだるるはちょっとつき過ぎ?

    ○夕立後グランドピアノの開かるる
    開放感がいいですね。

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