2012年12月30日日曜日

地上波初句会・投句一覧

今年一年ありがとうございました。最後の投句一覧です。

【地】
だんだんと地声になつて霜の夜
火星からイヤフォンを耳に地球蹴る
数え日のともす提灯路地の声
数え日の地下鉄どこか非日常
地下街に雪の気配を感じをり
地下街は春着の娘たちばかり
地団駄を踏む音ありて去年今年
着膨れて意固地を通す家系なる
天も地も人のうへなる海鼠かな

【上】
角上魚類老いも若きも年用意
結ひ上げて冬のひかりを楽にせむ
歳末や頓服薬が卓の上
煮凝や上海帰りのリルふたり 
上野まで行くまでもなき年用意
盛り上がる上腕二頭筋玄冬
日脚伸ぶ坂の上から見える塔
白い息上昇気流に乗せてみて

【波】
寒波来る舌にざらりと砂糖菓子
極月のもやもやとする超音波
淡雪の電波の間すり抜けし
電波塔試験放送風冴ゆる
日光の波間にただよう蝉の声
波音の耳にやさしき枇杷の花
波平に黒髪ありしころの雪
風花の空のさざ波笛ふく子
物干しに残るハンガー寒波来る

【初】
ボーナスも最初で最後七軒目
初空にちちははいもと駅に行く
初御空山はひとりの露天風呂
初雪や振り返りもせぬ別れ際
初台にころがつてゐる冬林檎
初版本ばかり集めて冬籠る
初恋は新年の季語初恋す
土手道で初めて見たよ長元坊

【当季雑詠】
こんな日は頭でつかち玉子酒
村人が眠れぬ山に護摩を焚く
寒いと呟くあなたに海眠る
手袋の指もどかしく暮れにけり
正座して受ければ清き年酒かな
着膨れて待合室の小座布団
冬木みな帆柱となり舫ひけり
炬燵猫トロッコとろとろ山の駅

(以上)

8句選(特選、逆選なし)
選句締切:1月2日(水)24時(JST)…さすがにお元日に締切はないだろうと思い、一日ずらしてみました(^^);
投稿先:恒信風句会
http://koshinfu.blogspot.com/

題に関わらず全体から8句選にてお願い致します。
整理の都合上、句の順番はそのままにして下さい。
投句一覧へのコメントとして、投稿して下さい。その際、名前/URLというのを選択して、俳号もしくはご本名を入力して下さい。URLは入れなくてよいです。
なお、右側にあった「最近のコメント」という欄は、ガジェットが壊れたらしく現在使えません。

ではよろしくお願い致します。

8 件のコメント:

  1. ○だんだんと地声になつて霜の夜
     日頃地声をあらわにできぬ生業なのでしょう。ドラマを感じます。
     
    ○地下街に雪の気配を感じをり
     手堅いけど、類想句が山のようにある気もします。

    ○着膨れて意固地を通す家系なる
     一家全員暖房をつけずに着膨れているのでしょうか。「なり」としなかった効果が私にはよく分かりません。どなたか教えて下さい。

    ○角上魚類老いも若きも年用意
     「角上魚類」って、甲殻類とか円口類とかのようなものかと思って検索しちゃいましたよ、まったくもう。これだから題詠は面白い。

    ○寒波来る舌にざらりと砂糖菓子
     知覚過敏な感じが季語にあっていると感じます。
     
    ○淡雪の電波の間すり抜けし
     電波が淡雪の間をすり抜けるならやや現実的だけど、淡雪が見えない稠密な電波の間をすり抜けるという把握がじつにいいですね。

    ○寒いと呟くあなたに海眠る
     これ、破調が効いていて、「海眠る」がすごくいいです。

    ○冬木みな帆柱となり舫ひけり
     冬ざれたヨット・ハーバーを見たことのある人なら、この見立ての気持ちは分かると思います。

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  2. ★煮凝や上海帰りのリルふたり
     リルリルどこにいるのかリルだれかリルを知らないか…そうか、二人いたのか。

    ★日脚伸ぶ坂の上から見える塔
     榎坂あたりかしら。この塔はスカイツリーではなく、東京タワーが相応しい。

    ★波平に黒髪ありしころの雪
     波平さんもいろいろあったのでしょうね。

    ★物干しに残るハンガー寒波来る
     針金ハンガーかな。カラスが持って行っちゃいまっせ。

    ★初御空山はひとりの露天風呂
     贅沢な正月や。

    ★初版本ばかり集めて冬籠る
     蒐集癖のある方の拘り。

    ★着膨れて待合室の小座布団
     確かに小さいな、待合室の座布団って。

    ★冬木みな帆柱となり舫ひけり
     俳句的虚構。措辞が美しいので赦しちゃう。

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  3. ○歳末や頓服薬が卓の上
    歳末・頓服・卓。昭和な年の瀬の感じですね。

    ○淡雪の電波の間すり抜けし
    眼前の雪の非現実感と見えない電波の現実感の不思議がいいですね。

    ○波平に黒髪ありしころの雪
    波とくれば波平です、私も。降る雪や昭和も遠くなりにけり。

    ○物干しに残るハンガー寒波来る
    吊るされたハンガーの人型の所在なさ。この冬は寒さが厳しいとか。

    ○初台にころがつてゐる冬林檎
    初と台…だからこの林檎は固くて新鮮だと思う。

    ○初版本ばかり集めて冬籠る
    収集家の幸せ極まれり。

    ○手袋の指もどかしく暮れにけり
    「もどかしく」を前後にかけてしまうもどかしさ感。

    ○着膨れて待合室の小座布団
    このなんともいえぬ貧乏ったらしさ、好みです。

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  4. 当方では時差で締め切りがこちらの元日になるので、今回は早目に済ませます。
    ◇地下街に雪の気配を感じをり
    其処はいつも地上の現実に対して、隔靴掻痒(かっかそうよう)
    もどかしさに溢れてゐます。

    ◇天も地も人のうへなる海鼠かな
    その再生力ひとつとっても絶大です。

    ◇極月のもやもやとする超音波
    心急く月なればこそのユニークな表現。

    ◇淡雪の電波の間すり抜けし
    電波とはまことに奇妙なもので、はかない雪片には道をゆずるのですね。

    ◇物干しに残るハンガー寒波来る
    テレビニュースなどで、よく視るシーン。この場合事件性は無いようで。

    ◇初版本ばかり集めて冬籠る
    案外若い方だったりして。

    ◇こんな日は頭でつかち玉子酒
    あらためてみつめると「頭でつかち」とはヘンな言い方。
    酒に玉子を入れるのを初めて試みたのはきっとヘンな人。
    こんな日ってずいぶんヘンな日なんだろう。

    ◇手袋の指もどかしく暮れにけり
    まだ幼さの残る恋人同士か。
    それとも要介護の高齢者か。「暮れ」をどうとるか。

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  5. ○角上魚類老いも若きも年用意
    拙宅の近くにもありますよ。w

    ○煮凝や上海帰りのリルふたり 
    素敵なマダムです♪

    ○日脚伸ぶ坂の上から見える塔
    春の近づく気配が感じとれます。

    ○寒波来る舌にざらりと砂糖菓子
    ざらりが効いています。

    ○淡雪の電波の間すり抜けし
    淡雪だから良いのです。

    ○波平に黒髪ありしころの雪
    過ぎ去り日の情景がありありと・・。

    ○初台にころがつてゐる冬林檎
    初台の地名が生きました。

    ○手袋の指もどかしく暮れにけり
    詩情があります。

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  6. ○火星からイヤフォンを耳に地球蹴る
    いつの日か、地球がサッカーボールのように
    蹴飛ばされているのか。無季の火星に。

    ○天も地も人のうへなる海鼠かな
     よく解からないが、海鼠が、とても偉そうで面白い。

    ○煮凝や上海帰りのリルふたり 
     リルリルのリフレインが聴こえてくる。煮凝の質感も好ましい。

    ○寒波来る舌にざらりと砂糖菓子
    寒波が、より舌の感覚をするどくしているのか。砂糖菓子の、ざらりとした質感がよく伝わってくる。

    ○極月のもやもやとする超音波
    押しつぶされそうな、極月のもやもや感が、ふだんは感知しない超音波を捉える。極月の女性。

    ○淡雪の電波の間すり抜けし
     空に舞う淡雪が、電波にのってハミングしている。

    ○寒いと呟くあなたに海眠る
     寒いと呟くあなたは、海に抱かれて眠っているんだ。

    ○手袋の指もどかしく暮れにけり
     若い恋人どうしの、手袋の指でしょう。もどかしくが、初々しくっていい。

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  7. ◯天も地も人のうへなる海鼠かな
    俳句では海鼠は強いなぁとつくづく。詩にも哲学にもなり、そして海鼠にはそんなことはどうでもいい。

    ◯歳末や頓服薬が卓の上
    年の瀬に薬のお世話にはなりたくないですが、頓服ですから、飲まずに済めば幸い。ちょっと変わった風味の俳味、好きです。

    ◯波平に黒髪ありしころの雪
    うわっ、ずるい!波平さんか~。しかも「黒髪ありしころ」。このナンセンス、いただきます。

    ◯物干しに残るハンガー寒波来る
    ぽつんと残るハンガー、うう、寒い。そのまま凍りそう。

    ◯初御空山はひとりの露天風呂
    贅沢ですね。雄大な景色独り占め。

    ◯初版本ばかり集めて冬籠る
    優雅ですね。こんな風に冬眠したいです。

    ◯初恋は新年の季語初恋す
    かわいい、認定したいところですが、どうだろう、初恋は春から初夏っぽいかなぁ……

    ◯手袋の指もどかしく暮れにけり
    はめたままでいいや、と思ったときに限ってうまくいかない。と最初読んだのですが、恋句として読むべきだと気が付きました。手袋のままで手をつないだけど、あるいは、手袋だから手も繋げず、なかなかその先に進まない、というじれったさ、でしょうか。そして日が暮れてデート終わり。もどかしい^^;

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  8. ○日脚伸ぶ坂の上から見える塔
    古来より時間の移ろいは日の影に見られますが、普段は気付かぬものです。日常の中の変化にはいつもはっとさせられます。

    ○寒波来る舌にざらりと砂糖菓子
    寒さを舌で感じる。ざらり、という擬音語になるほどなと思いました。

    ○淡雪の電波の間すり抜けし
    淡雪がすり抜けるんですね。現実離れした「淡雪」を感じます。

    ○波平に黒髪ありしころの雪
    波平に黒髪があろうが無かろうが、雪は関係なく降るはずなのに。波平が過去に何を感じるのか、いろいろ楽しくよめました。

    ○初台にころがつてゐる冬林檎
    この地名を、どうよめばいいのか困りました。しかし、はじめに新年の机のようなものをイメージした私にとって、この林檎を中心としたスケールのギャップは面白かったです。

    ○手袋の指もどかしく暮れにけり
    恋句と聞き、なるほどなと思いました。

    ○正座して受ければ清き年酒かな
    くすっと笑いました。まぁ、新年ですから。

    ○着膨れて待合室の小座布団
    自分の着ぶくれを感じる瞬間を思い出しました。

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